(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今は高齢化に伴う相続件数の増加により、相続に関する生前準備の重要性が広まり、「自分ごと」として取り組む親世代・子世代が増えています。しかし、どれだけ周到に事前対策をしたとしてもそこは人の命とお金に関わること――思い描いたとおりになりにくいのが、相続の難しいところです。日本橋中央法律事務所の山口明弁護士が、実例を交えて解説します。

不動産オーナーに人気の節税対策は「長生き」がリスクに

不動産オーナーが家族のために行う節税対策として「更地にアパートを建築し、アパートローンを組んで財産評価額を圧縮することで、相続税の課税額を減額し節税を狙う」というものがよくあります。

 

相続発生と竣工のタイミングが合えば効果てきめんですが、都合よくタイミングがリンクするとは限りません。「私もそろそろ……」と対策するも「その後、想定以上に長生きして節税効果が得られなかった」(不謹慎な話ですが……)というケースはしばしば起こります。

 

家族からすれば、高齢の親を抱える傍ら「無理して建て替えなければよかった……」ということになります。

 

また、この方法には財産評価額が減りすぎてしまうという逆リスクが潜んでいます。アパートを建築して財産評価額の圧縮を狙ったつもりが、エリアが悪く、持ち主に利益のない「負動産」になってしまうという場合があります。建物を建ててしまったがために身動きが取れず、売却しようにも業者に足元を見られ……となればまさに最悪の事態です。

手軽で人気の自筆証書遺言は「日付の記載漏れ」に注意

昨今は遺言書の重要性が以前に比べて周知されるようになりました。遺産を残す予定の人が、遺産を相続することとなる家族に向けて内容を考え抜いて書き上げる遺言書。労力や費用面から、公正証書遺言ではなく、自筆証書遺言を選択する方が少なくありません。ところが必須の記載事項に漏れがあり「効力を発揮できない」というケースが多々あります。

 

プロの目が通らない自筆証書遺言は「日付の記載漏れ」等、ごくごく基本的な部分を見逃すことがあるので十分に留意が必要です。

次ページ1人で介護を引き受けたのに謂れのない使い込み嫌疑をかけられ……

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