中村夫婦の問題点
隆さんは個人事業主として、国民年金の第一号被保険者として保険料を納め、65歳から受取れる基礎年金を70歳に繰下げして受け取っていました。
厚生年金に加入していた場合、今回のように高齢夫婦の夫が先に亡くなった場合には遺された妻に対し遺族厚生年金が支払われることもありますが、遺族基礎年金は子のない妻に対しては給付はありません。中村さん夫婦の子どもたちは成長して年齢要件を満たさないため(18歳到達年度の末日を超えている)、夏子さんは給付されません。
そうなると、遺された妻は自分の公的年金で生活していくことになり、こういったリスクが内在していましたが、それに気が付いていなかったことが問題といえます。
一般的に、子どもが独立すると死亡保障は不要という考えもありますが、今回のように隆さんの死後に収入が途絶えてしまう場合、十分な資産がなければ死亡保障は不要ともいいきれません。
しかし、隆さんは先述の生命保険会社の保険外交員より、「老後は病気と介護の保障が大事」と提案を受け、終身の200万円の保障と、医療、介護の保険に切り替えてしまい、死亡保障がほとんど残っていなかったのです。
確かに年を重ねれば病気に罹患する可能性は高くなりますが、高額療養費制度で自己負担の上限額も決まっているため、優先順位をつけるならば隆さんの死亡時の収入遺失のリスクのほうが優先的に対策すべき問題だったといえるでしょう。
個人事業主の夫婦が配偶者亡きあと、老後破産しないために
中村夫婦に必要だったこと
まず、隆さんが死亡した場合のリスクをしっかり把握することが必要でした。今回のような場合、掛け捨ての死亡保障や、短期払いの終身保険などを利用することで死亡時や介護が必要になった場合に対策しながら、長生きリスクに活用できる資産として保有しておくことも可能でした。
また、保障ではなく、資産が2,000万円あれば年利3%程度で運用しながら取り崩すことで、毎月10万円を取り崩すことができます。夫の死後にまだ2,000万円が手元にありますので、資産寿命を延ばすための運用の知識を学び運用し、年利4%で運用しながら年間120万円ずつ取り崩しても97歳ごろまで2,000万円が残る計算になり、不安を解消するために有効です。
夫が元気なうちにリスクを正しく把握し対策を考えること、また、夫の死後であってもある程度の資産がありますから、いまなにができるか情報を得て対策していけば不安を解消していくことは可能です。
「法人設立」という選択肢
今回の中村さんのようなリスクは多くの個人事業主、フリーランスのご夫婦に内在しています。
内閣府が2019年に行った調査の結果、個人事業主、もしくはフリーランスとして働いている人の割合は約341万人といわれています。こういった働き方を選んでいる方は、どちらかが早くに亡くなったときへの備え、つまり配偶者の収入の減少リスクを理解しておく必要があります。
現代では資本金1円、登録免許税6万円からでも法人設立が可能で、フリーランスでも法人を設立することで厚生年金に加入し、将来の公的年金の拡充や遺族年金を増やすこともできます。
ほかにも個人事業主、フリーランスではできない税制がお得な仕組みを利用することもできるため、フリーランスとしてすでに事業を始められている方も法人設立を検討されてみてもいいでしょう。
早い段階で現状を正しく把握し、ご自身のライフプランに合わせ、NISAなどの制度や生命保険なども検討し、人生を豊かに過ごせるマネープランを検討していきましょう。早く考えればその分多くの選択肢があります。
小川 洋平
FP相談ねっと
注目のセミナー情報
【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション
【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

