パソコンで作った控えを保存するだけで大丈夫
経理以外の会社員が仕事で取り扱う書類で電子帳簿等保存のルールに含まれるのは、「自分(自社)がパソコンで作って印刷し、手渡しや郵送でやり取りをした取引関係書類」です。「自分が作った」書類なので、見積書や請求書などを相手に発行する際、手元に残しておく「控え」のデータが電子帳簿等保存の区分にあてはまります。
大きなポイントは2つです。まず「パソコンで作った書類」であること。手書きの書類は電子帳簿等保存の対象にはなりません。途中で修正などの手書きの工程が加わると、電子帳簿等保存の区分から外れてしまい、必ず紙での保存が求められます。もうひとつは、手渡しや郵送など、紙に印刷して先方に渡していること。メールやクラウドを使って渡すと電子取引になり、電子取引のルールで保存、となります。
電子帳簿等保存で守るべきルールは3つあります。
①関係書類の備え付け
②見読可能の確保
③税務調査でのダウンロードの求めに応じること
です。どれも難しく聞こえるかもしれませんが、①は「システムの使い方などをわかるよう、マニュアルを用意しておく」②は「ディスプレイやプリンターを用意しておく」③は「税務署から『書類を見たい』と言われたら、すぐにダウンロードできるようなかたちにしておく」という意味です。このルールの①〜③は、基本的に経理担当が対応するので、会社員として何か新しい仕事が発生することはありません。
会社が「電子帳簿等保存に対応する」となったら、作ったデータを所定の場所に格納するだけでOKです。
◆電子帳簿等保存(国税関係書類)のルールで保存する書類
パソコンで作って手渡しや郵送でやり取りした、書類の控えは電子帳簿等保存のルールで保存します。
◆電子帳簿等保存のフロー
①パソコンで書類を作って、保存をし、印刷する。
②メール添付や郵送で先方に送り、
③保存したデータを控えとして経理に提出。
★Point★
電子帳簿等保存はパソコンで作って発行した書類(控え)が対象!
手書きの書類は対象外。
さらにメールで送ると「電子取引」になり必ず電子データ保存が必要。
◆電子帳簿等保存(国税関係書類)の最低限のルールはコレ!
実は、最低限守るべき保存ルールでは、経理以外の会社員にとって「仕事が増える」ことはほぼありません。
1. 関連書類を備え付ける
会計システムの説明書や、操作の説明書、もしくは、訂正や削除があった場合に社内でどうやって対応するかのマニュアルを用意しておいてくださいね、という内容です。経理が主導で行います。
2. 見読可能な装置の設置
難しそうに思える用語ですが、「税務調査等があったときに、確認ができるようデータを保存しているパソコンやハードディスクには中身が見られるディスプレイをつけておいてね」ということです。ディスプレイやプリンターがあればOKです。会社員は追加でやること特になし。
3. 税務署の求めに応えられる
税務署から求められれば、いつでもデータをダウンロード、提出できる状態にしてあるかという項目です。
★Point★
「電子データを保存して、経理が指定する場所に移す」ということを守れば、会社員は難しいことをする必要はナシ!
《電子帳簿等保存と電子取引》
作成した同じ書類の控えでも、郵送すると電子帳簿等保存、メール等で送ると電子取引のルールでの保存となります。電子取引では基本的に検索機能が必要です。保存の仕方を変えると社内が混乱するため、どちらも検索機能をつけて対応する会社もあります。
会社のルールが複雑にならないよう、電子取引のルールと併せて対応する場合には「書類をすぐ検索できるようにしておく」などのルールが追加されることも。
☆Memo 書類のタイトルを使うとデータ検索機能をつけられる☆
「データ検索機能」と聞くと難しそうですが、例えば、1年(法人の場合は期)ごとのファイルを作り、その中にやり取りをした請求書や領収書を保存するだけでも、検索機能と見なされます。経理から「提出する際は、ファイル名に書くことと順番をそろえてください」と言われたら、めんどうがらずに対応しましょう。
《Key Word》
電子帳簿等保存
パソコンで作った帳簿と取引関係書類の保存ルールの区分。
書類の控え
取引先に送付した正式な書類とは別に、発行側が写しとしてとっておくもの。
中島 典子
税理士、社会保険労務士、CFP
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