新しいNISA、どんなメリットがある?
2024年1月から新しいNISAがスタートしました。各種メディアでもこの話題で持ちきりです。
しかし、いままで投資経験のない初心者の方々からすると、どんなメリットがあるのか、どんな商品に投資すればいいのか等、悩むところが多いのではないでしょうか。
ここでは、新しいNISAの特徴や、制度の利点を生かした投資先について初心者にわかるように解説します。
新NISAの6つの特徴
新NISAには、大きく6つの特徴があります。
(1)儲かった利益に税金がかからない
(2)1年間に360万円の投資ができる
(3)一生涯に合計1,800万円まで投資できる
(4)いつでも解約が可能
(5)解約すればその分また投資できる
(6)運用する期間が無期限
ひとつずつ解説していきます。
(1)儲かった利益に税金がかからない
通常の特定口座や一般口座で投資をした場合、運用益には所得税と住民税を合わせて20%の税金がかかります。
しかし新NISAでは、NISA口座で運用して利益が出たとしても、税金がかかりません。
投資の結果、得られる利益を年率5%と仮定すると、従来の投資ではそのうち20%、つまり年率1%程度が税金としてかかっていたものが、そのまま手取り金額となるのです。
つまり、株式投資の期待利回りが5%であった場合、NISA口座で運用すると、利回りが1%アップする、と考えることができます。「利用しない人は損をしている」といえるのではないでしょうか。
とはいえ、すでに特定口座で運用している株式や投資信託は売却し、そのお金をNISA口座に移したほうがいのか、というと、むずかしい問題があります。すでに大きく値上がりしている場合、売却すると税金が取られてしまうためです。
しかし、特定口座で運用を続けたとしても、将来売ったときに同じだけ税金を取られることになるため、先に税金を支払い、早めにNISA口座に移してしまうほうが有利となる可能性は高いといえます。
(2)1年間に360万円の投資ができる
新NISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の合計で、年間360万円の投資ができます。
内訳は、「つみたて投資枠」で120万円、「成長投資枠」で240万円の合計360万円です。
この2つの投資枠がどのように異なるのか、頭を悩ませている方もいるかもしれませんが、これは単なる「入金ルールの違い」です。
つみたて投資枠では、定期的な積み立て投資が必要ですが、成長投資枠では、年間240万円までいつでも自由に投資することができます。たとえば、投資に回せるお金が新たにできたときに入金すればよいのです。
「自由に投資できる」と聞くと、「ならば、投資するタイミングや商品選択が重要になるのでは?」と考えてしまうかもしれませんが、どのタイミングで投資すべきか・すべきでないのか、どの商品が儲かるのか・儲からないのか、といったことについては、プロの投資家でも判断できないことです。
そのため、お金ができたそのタイミングでの入金をおすすめします。
(3)一生涯に合計1,800万円まで投資できる
新NISAでは個人投資家1人が、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の購入価格を合計して一生涯に1,800万円まで投資することができます。
このうち「成長投資枠」の上限は1,200万円までです。1年間で240万円まで投資できるため、最短で1,200万円の枠を使い切るとすると5年かかります。
一方で、「つみたて投資枠」は1,800万円以内の場合は上限がありません。そのため、1,800万円の上限額まで、すべて「つみたて投資枠」で投資することもできます。
すべて「つみたて投資枠」で投資しようと、毎年1年間の上限の120万円を積み立てていった場合、15年で枠を使い切ることになります。
(4)いつでも解約が可能
iDeCoや企業型確定拠出年金とは違い、NISA口座の解約はいつでも可能です。
人生において、突然まとまったお金が必要になることもあるでしょう。そのような場合、いつでも解約できるほうが助かると思います。
(5)解約すればその分また投資できる
もし新NISAを解約した場合、その分の空いた投資枠は、翌年以降に復活します。
そのうえで、1年間360万円という上限はありますが、繰り返し投資することが可能なのです。
(6)運用する期間が無期限
新NISAは、運用する期間が無期限、つまり無期限の長期投資が可能です。
NISAの特徴を生かした投資先とは?
資産運用の基本は「長期・分散・積立て」です。「積立て」に関してはNISAの性質上、コツコツ投資していけばクリアすることができます。
「長期」も、「無期限での長期投資が可能」というメリットを生かし、買ったらずっと持ちっぱなしの長期投資が好ましいでしょう。
生涯投資枠の上限1,800万円は購入価格で計算するため、値上がりする前の早い段階で1,800万円を使い切り、その後はずっと放っておくことをおすすめします。
ずっと長く持つことを考えると、投資対象に偏りがあると不利になります。これは資産運用の基本の「分散」にあたります。
つまり、日本株、米国株などといった特定の市場に対して偏った投資を行うよりは、全世界の株式に平均的に投資する商品のほうが有利になる、ということです。
また、長期間にわたる複利運用では、信託報酬の差が利回りに多く影響します。そのため、信託報酬は低い商品のほうがいいでしょう。購入手数料を3%支払うなど論外です。
これらの理由を加味すると、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が最適です。これを、つみたて投資枠も成長投資枠にも投資すればよいでしょう。
多くの書籍や雑誌の特集で、つみたて投資枠と成長投資枠で別の商品を勧めたり、投資家の好みに応じて商品を選ぶことを勧めたりするものもありますが、これまで多くの富裕層の資産形成のサポートをしてきた筆者からすると、金融理論を理解していない、あるいは金融理論を理解しているが金融機関に忖度している担当者が書いているのではないかといぶかってしまいます。
「資産運用の安全性を高めるための一般理論形成」でノーベル経済学賞を受賞した経済学者のハリー・マーコウィッツ教授は、「中途半端な分散投資はダメだ、とことん分散させなければいけない」と教えています。
それに従うと、投資するべきは、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)一択だといえます。これを買いたいだけ買って、老後まで放っておくことが最適だといえるでしょう。
※ 本記事の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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