損がないなら、営業協力につきあうのもよいが…
「融資で増えた資金で投資信託を買いましょう」
銀行の営業係は、たくさんの営業目標に追われています。融資だけでなく、投資信託や生命保険などの販売も営業目標の一つです。一方、銀行の営業係が営業する相手は限られ、自分の担当先ぐらいです。営業しようにも売り込む先が少ないのです。
そのため、営業係は自分が担当する融資先に営業していくことになります。また、融資先の社長は担当者のお願いを聞いてくれることが多いものです。銀行が融資を行ってくれなくなったら自社の資金繰りに支障をきたすため、気を使って銀行の担当者の言うことを聞く社長は多いです。
企業や社長にとって損がほとんどないことであれば、営業協力につきあうのもよいのですが、企業や社長にとって損であることにはつきあう必要はありません。
銀行が融資先企業に対して貸し手として優位な立場にあることを利用し、企業に不利益を与えることは「優越的地位の濫用(らんよう)」となります。優越的地位の濫用とは、取引上、優越的地位にある者が、取引先に対して不当に不利益を与える行為のことで、独占禁止法により禁止されています。
融資は、資金使途があって行うものです。
投資信託や株式などへ投資するための資金は、融資の資金使途として認められることはなく、それを資金使途として融資を申し込んでも審査は通りません。
運転資金を資金使途として融資を受け、その全額を仕入や経費の支払いで資金使途どおりに使った後でも、仕入や経費の支払いを行う一方で売上入金もあるため、預金残高は多く残っているものです。その預金に目をつけ、銀行員が投資信託の購入を勧めてくることがあります。
その預金で投資信託を購入することは、融資で得た資金を使うことと実質的に同じです。融資金額の全部を仕入や経費の支払いで使った後であれば、形式的には資金使途違反になりません。しかし、融資で多くなった預金で投資信託を購入することとなるため、実質は資金使途違反です。いくら営業目標に追われているとはいえ、このようなことを平気で勧めてくる銀行員がいることは残念です。
融資で増えた資金で投資信託を購入することは、運転資金として借りたものを投資信託にあてることとなり、企業の資金繰りは悪化します。融資で増えた資金が投資信託に消えれば、資金繰り的には融資を受けていないのと同じです。一方で、その融資の返済が始まり、資金繰りは苦しくなります。
また、投資信託は価格が上下するものです。融資で増えた資金で購入しているので、投資信託の購入金額は大きく、価格の下落により大きく損失が出てしまうこともあります。
融資を受けた後、投資信託を勧められても断るべきです。「投資信託を購入してくれないと次の融資審査に支障が出る」と銀行員が匂(にお)わせ、投資信託を購入させたら、優越的地位の濫用であり、問題となります。そもそも投資信託を購入しないことで融資に支障が出ることはありません。
《ポイント》
融資で増えた資金で投資信託の購入を勧められても応じてはいけない。「次の融資審査に支障が出る」と銀行員が匂わせ購入させるのは、優越的地位の濫用となる。
川北 英貴
株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役
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