「あの言葉、どう解釈すれば…?」経営者を悩ませる、銀行員のひとこと。ベテランコンサルタントがコッソリ教える「ウラの意味」

「あの言葉、どう解釈すれば…?」経営者を悩ませる、銀行員のひとこと。ベテランコンサルタントがコッソリ教える「ウラの意味」

銀行員の言葉を常に注意深く聞いている経営者でも、ときに「あのひとことは、どういう意味だったのか?」と疑問や不安を感じることがあります。ここでは、銀行員のひとことに秘められた真意について、ベテランのコンサルタントが解説します。※本連載は、川北英貴氏の著書『社長、この1冊で融資交渉が強くなります! 銀行員のそのひとことには理由がある』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

ひょっとして「試算表の粉飾」が疑われている?

「売上入金をうちの銀行の預金口座に入るように
してくれないですか?」

 

融資を受けている銀行から「売上入金をうちの銀行の預金口座に入るようにしてくれないですか?」と言われることがあります。これは言い換えると、売掛先(うりかけさき)に対し、その銀行の預金口座へ振り込むよう依頼してほしいということです。

 

なぜ銀行員がそのように言ってくるのか、次の3つの理由があります。

 

1.融資の保全とするため

将来、融資が返済できなくなったとき、銀行は融資と預金とを相殺できます。また、相殺する前に預金が流出しないよう、企業が返済できなくなる徴候があれば銀行は預金ロックを行えます。

 

*預金ロック……預金口座から他への振込や現金引き出しをできないようにすること。融資と預金の相殺を見すえて、銀行が預金ロックしてくることがあります。預金ロックを行ってくるケースには、〈預金口座や担保に入れている不動産などに外部から差し押さえがあった〉、あるいは〈返済が延滞した〉などがあり、これらの事象は近いうちに融資の返済ができなくなる徴候です。預金口座の残高が多いうちに預金ロックを行えば、その後に融資と相殺できる預金を多く確保できます。このようなことを想定して〈預金口座にふだん多くの預金がある状態を作っておきたい〉と銀行は考えるのです。売上入金が集まれば、その預金口座の残高は高止まりするからです。

 

2.銀行の採算を良くするため

例えば、銀行から3000万円、金利2%の融資があり、一方で、その銀行の預金口座に常に2000万円の預金があり預金金利は0%である場合。銀行が得られる利息は融資の返済がないものとして(3000万円×2%=)年60万円、また実質の融資金額は(3000万円-2000万円=)1000万円となります。実質1000万円の融資で60万円の利息となり(60万円÷1000万円=)6%もの実質金利となります。このように、融資を行う一方で、その会社の預金口座に多くの預金があれば、銀行は採算が良くなります。

 

3.売上の動きを注視するため

売上の多くを自分の銀行の預金口座に入金されるようにすれば、銀行は預金口座の動きを見て、その会社の売上動向を注視できます。入金が少なくなってくれば、〈売上は減少しているのでは?〉と推測でき、売上減少により業績が悪化することを銀行は早いうちから警戒できます。

 

企業から定期的に試算表を提出されていても、その試算表は粉飾されているかもしれません。売上入金の動きにより、銀行は実際の売上動向をつかむことができます。

 

* * * * *

 

このような3つの理由から、売上の入金を自分の銀行の預金口座に入れるよう、銀行員は依頼してくるのです。

 

企業としては、銀行員の言うことを聞くことで引き続き融資を行ってくれそうか、考えたいところです。売上の多くをその銀行の預金口座に入るようにすることで、銀行との関係が深まり、今後の融資も期待できるのであれば銀行員の言うとおりにしてよいですが、今後の融資が期待できなさそうなのであれば、銀行員の言うことを聞くメリットはありません。その銀行が自社に今後も融資を行ってくれそうかどうかで判断してください。

 

《ポイント》

銀行員が「売上入金を自分の銀行の預金口座に入るようにしてほしい」と言ってきたときは、それを行うメリットが企業にあるかどうか見極めて判断する。

 

川北 英貴
株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役

 

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※本連載は、川北英貴氏の著書『社長、この1冊で融資交渉が強くなります! 銀行員のそのひとことには理由がある』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

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