世界の「年金受給開始年齢」
現在、日本における国民年金の受給開始年齢は65歳(繰り下げ・繰り上げ受給をしない場合)。しかし度々囁かれるのが、「近い将来、70歳まで引き上げられるのでは?」という言説だ。
日本年金機構『主要各国の年金制度の概要(更新日:2022年5月13日)』によると、現在老齢年金の受給開始年齢が世界でもっとも高いのはアイルランド・67歳。2028年までに68歳へ引き上げられることが予定されている。
当然のことながら、受給開始年齢の引き上げに対してはアイルランドでも有権者から反対の声が多くあがっていた。反対を受け政府でも検討が重ねられていたものの、結局段階的引き上げが進んでいる現状にある。
とはいえアイルランドでは老齢拠出年金が導入された1961年時点で受給開始年齢は70歳とされており、その後一度65歳まで引き下げられていた経緯がある。
日本ではご存知の通り、受給開始年齢は長らく60歳とされていた。“昭和55(1980)年改正においては、厚生年金の支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げることを目指し、政府案では、老齢年金の支給開始年齢について次の財政再計算で所要の改定措置が講ぜられるべき旨の規定が盛り込まれたが、この規定は国会修正により削除された。”(厚生労働省『[年金制度の仕組みと考え方]第4 公的年金制度の歴史』)
65歳まで引き上げの法律が可決されたのは2000年のこと。長い間引き上げを保留してきたことによる財政のツケが、今になって回ってきたとも言える。
受給開始年齢引き上げは避けられない?
アメリカでは現在の66歳から2027年までに67歳へ引き上げ予定であるほか、多くの国で受給開始年齢の引き上げが決定されている。それに鑑みれば日本でもさらなる引き上げが進むことは想像に難くない。
ちなみにアイルランドでは、年金制度への加入義務は所得により発生する。日本では無業の人であっても年金制度への加入義務があるが、それは世界的に見て珍しいようだ。
「70歳まで生きるかもわからないけど」「70歳まで働かないといけないなんて」などと批判的な声も聞かれるものの、超少子高齢社会の日本ではどうにも避けようのないことかもしれない。老後への不安は尽きないが、なんとか資産形成の手段を自力で講じていく必要がある。
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