「自分はがんばっていない」という人に気がついてほしい…「嫌なことこそがんばろう」という“呪い”【Xフォロワー1.5万人・心理カウンセラーが解説】

「自分はがんばっていない」という人に気がついてほしい…「嫌なことこそがんばろう」という“呪い”【Xフォロワー1.5万人・心理カウンセラーが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

Xフォロワー1.5万人、心理カウンセラーの寝子氏は「親との関係で生じるストレスに悩んでいる場合のほとんどは、慢性的な“我慢”が根っこにあるように感じる」といいます。寝子氏の著書『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、今のしんどさを軽くするためのヒントを紹介します。

「がんばる=嫌なことに立ち向かうこと」という誤解

自分の気持ちの中でも、「本当はやりたくない」という気持ちを知ることは意外にも難しいものです。

 

どうしてかと言いますと、明らかに嫌々やっていると、周囲の人に怒られたり嫌われたりする確率が上がります。最悪の場合、酷い攻撃を受けるかもしれません。

 

このようなリスクがあるので、嫌々やっても許されるという安心感が持てるときでないと、そうはできないものですよね。

 

そのため、本当はやりたくないことでも、それを態度に出していないことが多いものです。そうすると、「やりたくないけどやっている」ことは気づきにくいためにやめられず、思っている以上に我慢が募っていることがあります。

子ども時代は「嫌な気持ち」を封印する

子どものころは、絶対的に力が弱く、指示される立場です。

 

そのため、親に認めてもらわなければその場に居られないとき、「嫌だと思う気持ち」すら隠します。そして、「嫌な気持ちを隠してがんばってやる」ことで子どもは適応します。

 

これは素晴らしい適応力です。ただ、このような経験が多いと、知らず知らずのうちにご自身にとっての“がんばる”ということが、「嫌なことを避けずにやり続けること」と認識するようになっていきます。

 

加えて、“がんばる”ことには良くも悪くも「能動性」が伴います。

 

嫌々やる場合は、自然と受け身になることは想像に難くないでしょう。受け身になることで、自然とエネルギーの使用量は制限されますね。嫌だと思う気持ち自体も、ご自身の中でそれなりに認められている状態にもなっています。

 

一方、「嫌な気持ちも封印してがんばってやる」ことを重ねていると、それに伴う「能動性」によってご自身もその行動に対しての前向きさや積極性を感じるため、「本当は嫌」という気持ちがさらに追いやられてしまうのです。

自分のことなのに「本当は嫌なこと」がわからなくなるワケ

心の基本的な作用として、心の中に矛盾する認識が生じたら一致させようと働くという無意識の働きがあります。前向きさや積極性が伴っている行動を嫌なことだと認識することは、心の中に矛盾を生じさせてしまいます。そのため、心は矛盾を解消しようと、その行動をプラスに捉える方向に作用し、「必要な試練なのだ」などとつじつま合わせをするのです。

 

すると、「本当は嫌なこと」がどんどんわからなくなっていきます。

 

そして、“嫌だったり、ストレスが多かったりすることに立ち向かうことこそが、がんばること”という認識が尚更強化されていき、それをしないことはわがままであり、がんばっていないと捉えてしまうのです。

 

そのような日々の中では、「“無理しないで”と言われても、どこからが無理かわからない」という心境につながっていく傾向があります。

 

けれど、それは「嫌なことがわからなくなる」だけです。ご自身にとって「本当は嫌なこと」はストレスとしてよくわからない不快感としてあり続けるため、しんどくなってしまいます。

「がんばる」を捉え直す

本来“がんばる”というのは、嫌なことを避けずにやり続けることだけではないはずですよね。自分の生活をより良く送れるように工夫したり、ご自身のストレスを減らす方向に努力したりすることも、がんばるからこそできることです。

 

もちろん、嫌なことをすべて避けましょうという意味ではありません。

 

大事なことは「“嫌なことこそがんばろう”という呪い」に気づくこと、好きなことにもエネルギーを向けてあげることだと思います。

 

人は、我慢などのストレスに気づくことができると、自然と行動も変えていくことができます。

 

いきなり「自分の許容範囲を超えないように行動を変えないと」と心がけても、許容範囲は見えてこないものです。

 

けれど、「実は我慢していたな」「けっこうストレスになっているのかも…」とご自身の本当の気持ちに共感できると、それだけで少しエネルギーが回復し、「一番やめるべき嫌なこと」への気づきに至ることがあります。

 

そして何より、がんばり過ぎようと、無理し過ぎようと、それは決して責められるようなことではありません。むしろ、そこまでできる適応力と精神力を持っている証です。

 

「どこからが無理かわからない」「がんばっていると思えない」、そんなご自身に気づき、今日までの日々を柔らかく労ってみてください。

 

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<本稿のまとめ>

●嫌なことに耐えることだけが“がんばる”ことではない。

●まずは「我慢しているかも」と意識してみるだけでいい。

●「“無理”がわからない」のは、素晴らしい適応力と精神力の証。

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心理カウンセラー 寝子

 

臨床心理士。公認心理師。スクールカウンセラーや私設相談室カウンセラーなどを経て、現在は医療機関で成人のトラウマケアに特化した個別カウンセリングに従事。トラウマの中でも、親子関係からのトラウマケアと性犯罪被害者支援をライフワークとしている。

臨床業務の傍ら、X(旧Twitter)で心理に関する発信をし始め、フォロワー1.5万人超え(2024年1月時点)。対処法よりも自分を理解することに重きを置いた内容が支持され、ブログ記事は「探していた答えが書いてあった」「自分の状態がクリアに理解できた」と評判になっている。

 

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※本連載は、心理カウンセラー・寝子氏の著書『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

「親がしんどい」を解きほぐす

「親がしんどい」を解きほぐす

寝子

KADOKAWA

●自分がどんなに疲れていても、親の頼みをつい聞いてしまう。 ●親子喧嘩でひどい言葉を言ったり、言われることが多い。 ●親に会うと、理由なくイライラしてしまう。 ●話を聞いてほしいのに、話が通じていない気がする。…

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