インドの「複雑な税制」は専門家でも戸惑う!?
Q.税制について最低限知っておくといいポイントを教えてください。
A.最低代替税、州付加価値税、中央売上税、奢侈税といった日本では耳慣れない税金もあるので注意しましょう。
インドの税金は直接税と間接税に分類され、基本的には日本と同じですが、個々の税の種類と複雑さは専門家でもとまどうくらいです。変更されることも多いので、最新情報をまめに入手し、不明な点は公認会計士などに確認することをお勧めします。
直接税
①個人所得税(Income Tax)給与や事業など個人の所得に応じ課税されます。税率は所得に応じて0%、10%、20%、30%。「課税年度中に182日以上滞在した場合」「課税年度中に60日以上滞在し、かつ当該年度以前の4年間で365日以上滞在している場合」のいずれかに該当する場合、居住者(resident)に区分され、納税義務が生じます。
一方、日印租税条約に基づき「日印租税条約における日本の居住者」「インド滞在期間が課税年度で183日を超えない」「報酬がインド国外の居住者から支給されている」「報酬がインド国内の恒久的施設によって負担されているものでない」の4条件を満たすと納税義務が生じないことになります。
②法人所得税(Corporate Tax)日本の法人税に該当し、税率は30.90%〜43.26%。法人の種類(内国法人、外国法人)、課税対象所得額(1億ルピー超、1000万ルピー超1億ルピー以下、1000万ルピー以下)に応じて税率が決まります。
③最低代替税(MAT:Minimum Alternate Tax)
会計上の利益の18.5%が法人税額(控除などを含めた税法上の算出額)を上回る場合、このMATを支払う必要があります。実効税率(19.055%〜20.9605%)は法人の種類および課税対象所得額に応じて決定されます。
④配当支払い税(DDT:Dividend Distribution Tax)
配当の支払い企業に一律15%(実効税率20%)が課されます。受け取る側は免税。
●間接税
①物品税(Excise Duty)
インド国内での製品の製造に課せられ、製造者が工場.倉庫から出荷するときに課税されます。基本税率は12.5%。製品の性質や最終用途により免除・減税が可能で、基本税率が適用されない品目も指定されています。
②サービス税(Service Tax)
モノ以外の「目に見えないサービス」を提供することに対する税金。基本税率は14%。課税される「サービス」は法令で細かく定められ、一部例外を除きすべて対象となります。
③州付加価値税(VAT:Value Added Tax)
州内での物品の販売に対して課税され、適用物品、税率(12.5%〜14.5%)は州により異なります。輸出の際はVATは免税となり、輸出製品の購入や部品.原材料購入時に支払ったVATは全額還付されます。
④中央売上税(CST:Central Sales Tax)
州境を越える物品の販売に対して、必要書類作成を条件に2%が課され、この書類がないと10%もしくは販売元州VATのうち高い方の税率が適用されます。各州に物流拠点を設け、製品が州境を越えないようにして節税する企業も多く、国内物流の阻害要因ともなっています。
⑤関税
基本関税、追加(相殺)関税、特別追加関税から成り立っています。関税分類は1975年関税率法に、品目分類はHSコード(Harmonized System Code)におおむね準拠しています。
海外送金で取得が義務付けられている「PAN」とは?
●日印二国間租税条約とPANの取得
日印租税条約に適応した場合の源泉課税率は、利子所得、ロイヤルティー、技術役務提供報酬のすべてが10%となります。海外送金に関しては受取人が非居住者でもPAN(Permanent Accounting Number)の取得が義務付けられています。この番号を取得しないと送金額の20%などの源泉徴収税が適用されます。所定フォームに記入し、法人登記簿謄本の英訳(インド大使館の認証が必要)などの書類を添付してインド国内のPAN申請センターに提出すると、通常2〜3週間で取得できます。
●奢侈税(Luxury Tax)に注意
高級ホテル、レストランなどでは奢侈税がかかります。たとえば8000ルピーの客室なら、奢侈税1650ルピー、サービス税593.60ルピー、付加価値税(VAT)100ルピーが加算され、請求金額は1万343.6ルピーになります。税率は対象項目・金額により異なりますが、最終的にもともとの金額の1.3〜1.5倍になると考えておくといいでしょう。