(※写真はイメージです/PIXTA)

2023年も前年を上回り、9年連続で増加した中学受験者数。増税やインフレなどで経済的に苦しみながらも、「こんな不安定な時代だからこそ、我が子には早いうちからよりよい教育を」と考える親が増えているようです。そのようななか、東京都が世帯年収910万円未満の所得制限を撤廃し、私立高校含めて授業料を実質無償化にする方針を固め、大きな話題となりました。本記事では、中学生と小学生の2児の母である神田さん(仮名/38歳)へのインタビューから日本の子育てにかかる教育費の実態を紐解きます。また、インタビュー内容をもとに、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の川淵ゆかり氏が教育費について助言します。

「私立を諦めてくれ」と息子に土下座

<インタビュー>物価高で支出が増えて…

Q:息子さんの中学受験を諦めたのはなぜですか?

 

A:昨年からの物価高はかなり影響しています。育ち盛りの子ども達ですから、食費を中心に支出が増えています。特に上の子は女の子なので、着る物や身に付ける物にも興味をもちはじめる年頃ですし、こういったところにも支出は増えています。

 

ですが、物価高で一番堪えたのは収入のほうで、原料高や光熱費のアップといった会社での経費増が私たちのボーナスにも影響してきたことです。

 

近々うちの会社も、早期退職者の募集をするのではないか、との噂があります。これまでは生活に不安を感じたことはありませんでしたが、主人も私もまもなく40歳です。これまでのように子供たちの教育にお金をかけられる自信がなくなってしまいました。やっぱりこの状況で、2人とも私立はどう考えてもムリなんです。

 

<FPからのコメント>教育費による家計破綻

物価上昇や増税などの家計支出増だけでなく、40代50代といった世代では、子どもが高校生・大学生など教育費用が一番かかる時期に当たることが多く、さらに「早期退職」「役職定年」といった収入減で苦労する家庭は増えています。

 

下記[図表3]のように多重債務の相談原因として一番多い理由の「低収入・収入の減少」のなかに「生活費・教育費の不足等」とあることから、教育費も家計の大きな負担となっている家庭があることがわかります。

 

※※	金融庁 / 消費者庁 / 厚生労働省(自殺対策推進室) / 法務省 「多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向」より引用
[図表3]財務局等に寄せられた「多重債務」に関する相談の概況 ※金融庁 / 消費者庁 / 厚生労働省(自殺対策推進室) / 法務省 「多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向」より引用

 

<インタビュー>息子に「私立を諦めてくれ」と土下座

Q:公立の中高一貫校というのも人気が高く、学費も安くなりますが、検討はされましたか?

 

A:はい、一応検討してみました。

 

ですが、入試方法が大きく違っていて、私立中学校は4教科(または2教科)での教科試験が中心ですが、公立中高一貫校では複数の科目の知識が必要とされる「適性検査」や「作文」が出題されます。5年生の半ばからの急な変更は、とても難しいものです。

 

Q:息子さんは納得されたでしょうか?

 

A:息子には4年生から私立中学受験に向けて勉強をさせてきました。急ですが、受験をやめてほしいと伝え、主人が土下座しました。

 

そのとき息子が「好きなサッカーができるようになるからいいよ」と言ってくれて。本当はとても勉強を頑張っていたんですよ。それを知っていたから、あまりにもいじらしくて、親として自分たちが情けなくて。涙が出てしまいました。

 

<FPからのコメント>教育にかかる費用

文部科学省が発表した令和3年度の学習費(年額)は次のとおりです(前回調査平成30年度)。

 

公立中学校 53万8,799円(前回48万8,397円)
私立中学校 143万6,353円(前回140万6,433円)
公立高等学校(全日制) 51万2,971円(前回45万7,380円)
私立高等学校(全日制) 105万4,444円(前回96万9,911円)

文部科学省 「令和3年度子供の学習費調査の結果について」より引用

 

なお、幼稚園から高等学校卒業までの15年間の学習費総額は[図表4]のとおりです。

 

[図表4]幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間の学習費総額

 

幼稚園~高校まで、オール公立とオール私立では実に3倍以上の差が生じることがわかります。

 

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