「売り買い」は基本的にしない!
「利食い千人力」という相場格言があります。「どれだけ少ない利益でも、利益には違いないわけだから、買ったなら売って、とにかく利益を確定させることが肝心だ」という意味です。
評価益は実現益ではなく、あくまでも評価上の利益なので、株価が値上がりしているうちは良いのですが、そのうち株価が下落に転じた時、そのまま保有し続けていると、どんどん評価益が減少し、下手をすると評価損に転じてしまうかも知れません。そうならないように、評価益が残っているうちに売却して、実現益にしましょうということです。
このようなスタンスで株式に投資すると、今度は「いつ売ったら良いのか」ということが気になってきます。
しかし、筆者は、よほどのことがない限り、「売らなくても良い」あるいは「売ってはいけない」とすら思います。
もちろん、筆者はファンドマネジャーとしてお客様の資金を預かり、運用する立場ですから、お客様がどうしても現金が必要だということになれば、ファンドの一部を解約して現金を作らなければなりません。
また、よりプラスアルファを求める必要があるため常にベターな投資先を求めて入替をしていく、それは仕事としてのミッションなので、個人の長期資産形成としての株式投資とは違う性質のものだと理解しています。
でも、自分自身のお金を投資するのであれば、「売り」は基本、考えません。なぜなら、先述の通り、企業の株式に投資することは、その企業のオーナーになることに他ならないからです。オーナーがいちいち売ったり買ったりを繰り返すのは、どう考えてもおかしな話です。
そもそも投資している企業は将来的に成長、あるいは株主還元姿勢などが改善していくものと考えている会社ですし、仮に成長しなかったとしても、年3%とか4%の配当利回りが得られれば、時間の経過と共に、その配当利回りが複利で増えていきます。
年4%の1年複利で計算すると、100の資産価値が10年後には148になります。20年間保有すれば、219です。
20年間保有して資産価値が倍になったら、極端な話、株価が投資した時の半分まで値下がりしたとしても、表面上は損失が生じていないことになります。
もちろん、「よほどのこと」が起こった時は、自分がなぜこの会社のオーナーになろうと思ったかを再度検討しなければなりません。創業経営者が交代した、新たな業態に新規参入した、ビジネスモデルが変わったなどが、その事例でしょう。
マーケットが堅調で全体的に上昇しているのに、自分の投資した銘柄の株価だけがどんどん下がっていくような場合は、何か大きな判断ミスをしている恐れがあります。検証してみるのも大事です。
しかし、このような場合でも、投資した理由と会社に変化がなければ、売却は不要でしょう。よほどのことがない限り、ただひたすら持ち続けるようにして下さい。株式は、「タイミングを取るもの」ではなく、「保有するもの」なのです。
中山 大輔
元JPモルガン・アセット・マネジメント ファンドマネジャー
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