この先、アメリカでは景気が低迷しても「金融緩和」ができない
過去30年くらいにわたって、米国株式の好調が続いてきました。しかし、米国株式の展望については、今後もこれまでのような上昇トレンドを続けることができるかどうかは、慎重に検討すべきで、特に「米国一強、一択」の考えには懐疑的にならざるを得ません。
なぜなら、その上昇トレンドを支えてきた要因が大きく変化しているからです。
一般的に、景気が悪化すると、「利下げ」をはじめとする「金融緩和」が行われます。それによって世の中にお金がたくさん回るようになるため、その一部が株式市場に流れ込み、株価が上昇します。いわゆる「不景気の株高」と呼ばれる現象です。
米国においては、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受けて経済活動が停滞し、世界で一斉に未曾有の財政出動が発動された2020年、2021年が、まさにその状況でした。
実際、ニューヨーク・ダウは2020年3月23日に、コロナショックによって1万8,591ドルまで急落した後、2022年1月3日には3万6,585ドルという過去最高値を更新しました。
ちなみに、2022年はこの最高値後に一旦大きく下落した後に反発し、2023年12月1日時点で過去最高値に近いところまで戻してきていますが、大きなトレンドが生じているとはいえない状況です。
しかし、問題は米国経済がこの先、本格的な景気低迷局面に入った時にどうなるのかということです。
前述したように、景気が悪化すると金融緩和政策が行われるため、本来であれば株式市場に資金が向かいやすくなるはずですが、今回はそうなるかどうか、わかりません。
地政学リスクや根深いインフレ懸念など複雑な要因が絡み合って、安易に緩和の姿勢に転じることはできないでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化を避けるため、米国では家計や企業を支援する目的で、莫大な額の財政出動が行われました。総額で600兆円超ともいわれています。
これに加えて、FRB(連邦準備制度理事会:中央銀行)による大幅な金融緩和も実施されました。
そこにウクライナ侵略が絡み、米中対立問題も深刻化しました。こうした地政学リスクの高まりによって、米国は今、「サプライチェーン」の大幅な見直しを求められています。
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