(※画像はイメージです/PIXTA)

子どもの負担にならないよう「老人ホーム」入居を選んだものの、必ずしも選んだ先が終の棲家になるとは限らない。しかし、賃貸アパートとは異なり「こんなところはイヤだ」と思っても、退去には大きなリスクが伴うケースもある。実情を見てみよう。

高齢者の重大テーマ「老人ホームの入居費用をどうする?」

日本の景気は回復基調だが、一般庶民の懐はいまだ厳しい状況が続いている。上がらない給料にインフレのダブルパンチで、個人の財産は実質目減りしている状況だ。

 

「失われた30年」を経て、昭和から平成初期には多数派だった専業主婦も激減し、就労世代は二馬力でクタクタになるまで働いているが、それでもなお、「会社員の父+専業主婦の母+子ども2、3人」が標準仕様だった自身の親世代の豊かさにはとうてい手が届かない。

 

四苦八苦しながら就労と子育てに追われる現役世代の「親世代」、つまり「サラリーマンの父+専業主婦の母」という組み合わせで家庭を営んできた70~80代もまた、自身の子世代が置かれている厳しい実情を理解している。

 

年齢を重ね、体が衰え、介護が必要になっても、必死の形相で働く子や子の配偶者の手を煩わせるには忍びない。

 

そうなると、高齢親と子の双方のメリットを考えた選択肢として「老人ホーム」への入居が浮上する。

 

もっとも、よほどの富裕層でない限り、入居先は限定される。

 

もし費用が手ごろな施設への入居を希望すれば、入居まで長く待たされる可能性が高く、なかには年単位になることもある。速やかな入居を希望するなら、必然的に民間施設になるが、費用の幅はピンキリだ。初期費用となる入居一時金は、ゼロ円~億単位まであるが、生活サービスが充実する高級ラインなら1,000万円以上を覚悟することになる。

 

一般的に多いのは、入居一時金100万~300万円程度、月額費用15万~30万円程度の施設だが、こちらも利用するサービスによってかなりの差が出てくる。

 

老人ホームの利用を検討するならぜひ覚えておいていただきたいのが、月額費用には含まれていない雑費等の発生だ。この部分の扱いは施設ごとに異なるため、事前に詳しく聞いておくことを強くお勧めする。ここの費用を見過ごしてしまうと、あとから想定外の金額を請求されて仰天…というケースもよくあるのだ。

自宅を売却し、ワンランク上の施設入居を夢見るが…

では、一般的な年金受給者が入居する施設を選ぶ場合、どのような価格帯が中心となるのだろうか。会社員の夫に先立たれた80代の妻が、平均的な金額の年金を受給していると想定して、入居できる施設の費用感等を見てみよう。

 

厚生労働省の調査によると、夫の遺族年金の平均受給額は月8万円程度。それに妻自身の国民年金月額6.6万円をプラスすると、年金収入は毎月手取り14万円程度だ。

 

割とハイクラスとされる、月額費用+雑費で月額30万円程度の施設への入居を考える場合、年金だけでは足りない月額およそ15万円は、貯蓄から出さなければならない。施設への入居期間は平均5年程度といわれているが、ギリギリで予算を組むのは不安だろう。仮に10年と想定したら、およそ2,000万円程度の費用が必要だ。入居一時金も貯蓄から賄うとなれば、ハイクラスの老人ホームへの入居は、とてもではないがむずかしそうだ。

 

だが、ここで「切り札」を挙げる人もいる。自宅売却による費用の捻出だ。自宅を数千万円で手放せたなら、想定よりワンランク、ツーランクアップの老人ホームへの入居がかなうかもしれない――。

 

温泉やスパ、レジャー施設の併設、豪華な食事などを楽しみ、窓からは高級リゾートを思わせる景観が広がる。人生の終の棲家として、理想的ではないか。

「施設の空気が耐えられない」逃げ出した80代入居者のケース

しかし、自分が望むタイミング・金額で自宅が売却できるとは限らない。また、エリアによっては売却自体がかなわないケースもある。見切り発車が危険なのは当然だが、希望価格での買い手がつくまで待つとなると、想定外に時間を取ってしまうリスクもある。

 

だが、その先にも懸念は残る。それは「入居した施設が気に入らない」というリスクだ。

 

家を売却してまでして費用をねん出し、満を持して入居した「終の棲家」も、イメージが違う、スタッフがイヤ、周囲と合わない、料理が好みではない…等々の理由で退去するケースは、実は少なくないのである。

 

どのような施設なのかは、実際に暮らしてみるまではわからない。

 

80歳の田中さん(仮名)は、横浜市青葉区の自宅を処分し、高級老人ホームに入居した。だが、スタッフはよく言えば礼儀正しく、悪く言えば距離がある印象で親しみにくく、先輩入居者たちも何かとマウントしてきてさっぱり打ち解けられない。

 

「決定的なのは、施設内の空気でした」

 

見学のときにはあまり気にならなかったというが、そこで日々暮らし始めると、とても耐えられなかったという。

 

「なんというか、ユリのようなフローラル系の匂いの芳香剤が、施設内に充満しているのです。ずっとその空気吸っていると、頭痛や目の痛みで本当につらいんです。スタッフにも訴えたのですが、〈確認しますね〉といったきり笑顔でスルーされてしまい…。どうやら皆さんが気にならないようでして。食事の匂いと混ざると最悪です。自分の部屋にこもる毎日でした」

 

しかし、家を売却してしまったばかりか、高額な費用をかけてしまったため、戻る場所もなければ、別の施設に移るための手持ちの資金もない。

 

「いまは長男のところで世話になっています。こんなことなら、家を売らなきゃよかったですね」

 

老人ホームが合わなかったが、戻る家もないというのは最悪だ。田中さんは長男が受け入れてくれたことで助かったケースだが、自宅売却する場合は「住み続けられる施設」を見極めてからにしたほうがいいといえる。

 

 

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