(※画像はイメージです/PIXTA)

人口の高齢化が進むなか、人生の最後を老人ホームで過ごす人が増えています。しかしなかには、入居後に後悔したというケースも……。一体なぜでしょうか。本記事では、Aさんの事例とともに介護業界の実情を、マネレボ株式会社代表の大久保美伽氏が解説します。

母を亡くした父「娘に心配をかけまい」と老人ホームへ入居

現在82歳のAさんは、3年前に1歳年下の妻を病気で亡くしました。一人っ子の娘がいますが他県に嫁ぎ、そう頻繁に帰れる距離ではないため、娘に心配かけたくない……そんな想いから妻を亡くしてすぐに老人ホームに入居しました。

 

現役時代は上場企業で部長職を務めていたAさんは60歳で一旦定年退職。約3,000万円の退職金を受取り、その後嘱託社員として65歳まで雇用延長しコツコツとお金を貯めてきました。65歳時点で金融資産6,500万円、ご夫婦で公的年金は月36万円。蓄えた貯蓄と年金で、ご夫婦で“悠々自適なセカンドライフ”を満喫していました。


Aさんご夫婦の一人娘Bさんは53歳です。他県に住むBさんには、子供が2人いて子供たちが大学受験までは実家への帰省はお盆とお正月の2回程度。

 

ちょうど子供たちの大学受験が終わったころ、Aさんの妻のガンが発覚してしまいます。娘のBさんは母のガン発覚後はなるべく実家に帰省し、父親と一緒に母の看病をしたものの、2回の手術もむなしく発覚から1年後に亡くなりました。

老人ホームに入ったら安心と思っていたが…

Bさんは母が元気だったときにあまり帰省できなかったことを悔み、病気発覚後はなるべく帰省し献身的な看病をしました。そしてお母さまが亡くなって気を落とす父を1人暮らしにさせるわけにはいかない……と同居を提案するも、父Aさんは「住み慣れたいまの町を離れたくない……そしてなにより1人娘に迷惑をかけたくない」と老人ホームへの入居を希望。Bさんもそんな父の意思を尊重し、Aさんと老人ホームを探すことに。

 

スタッフの対応もよく、Aさんの年金28万円のなかで支払うことができる老人ホームに入居を決めました。入居後Aさんに会いに行くと元気そうだったし、体調に異変があればスタッフさんが連絡をくれるし、Bさんもやはり老人ホームに入居してよかったのかな……と思い始めた矢先。老人ホームに入居した父から1本の電話。

 

娘B「もしもし、お父さん、どうしたの?」

 

父A「助けてくれ……」

 

娘B「えっ、なにがあったの!?」

 

電話越しに弱気の父。こんな様子の父は初めてだったので、Bさんは慌てて施設へ駆けつけます。

 

そこでBさんが目にしたのは、入居時とは明らかに様子が変わった施設でした。父から話を聞いてみると、入居のときからよくしてくれてBさんも信頼していた女性スタッフが辞め、その後続けて6名の退職が相次ぎ完全に人手が足りないという状況……。

 

コールを鳴らしてもいつまでもスタッフが来ない。食事の際のサポートも雑で、食べ物をこぼしてもそのまま。そのため、部屋はもちろん施設全体が埃っぽく汚れた印象。入居時に感じていたあたたかさはなくなり、殺伐とした空気がそこにはありました。こうした空気感のためか、父と同じ入居中のおじいさん、おばあさんたちは皆元気がない様子でした。

 

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