「金融所得課税の強化」で新NISAの活用が活発化する?
新NISAのスタートに際しては、ひとつ気になる点があります。気になることではありますが、これが実際に行われれば、ますます株式市場にとってはポジティブな要素になるだろうと期待もしています。
それは、金融所得課税が強化されることです。
現在、預貯金の利息にかかる税率は、20.315%です。あるいは投資信託の値上がり益や分配金、特定口座を通じて購入した株式の売却益、配当金への課税も、すべて20.315%になります。金融所得課税の強化とは、この税率を引き上げることです。最近、岸田政権はさまざまな増税策を矢継ぎ早に打ち出していますから、金融所得課税の強化も例外ではありません。
そもそも、岸田内閣がスタートした時、金融所得課税を強化することを匂わせた発言によって株価が急落し、マーケットからの洗礼を受けました。
ただ、今度はちょっと事情が違うかもしれません。なぜなら前述したように、新NISAによって、最大1,800万円という非課税枠が認められたからです。
総務省統計局が2023年5月12日に公表した家計調査報告の平均貯蓄額は、2人以上世帯で1,901万円、中央値は1,168万円でした。また、2人以上世帯のうち勤労者世帯の平均貯蓄額は1,508万円で、中央値が928万円です。勤労者世帯の中央値が928万円、2人以上世帯全体の中央値でも1,168万円ですから、新NISAの非課税保有限度額に十分納まります。
つまり、金融所得課税を強化するといっても、新NISAを活用すれば、ほとんどの個人資金を非課税運用できるわけですから、「金融所得課税の強化で税金をたくさん取られたくないのであれば、新NISAを活用して投資して下さい」ということになるのです。
誰もが、たくさん税金を取られたくはないでしょう。まだ金融所得課税の強化については、議論の俎上にも上がっていませんが、金融関係者の間では、その可能性は十分にあるという声が、結構聞こえてきます。
さらに追い打ちをかけるように直近では、退職所得や通勤交通費への課税強化、という話もでてきているようです。
金融所得課税の強化などの動きが現実性を帯びてきた場合、新NISAを通じて株式市場にどの程度の資金が入ってくるのか──注目して見ています。
中山 大輔
元JPモルガン・アセット・マネジメント ファンドマネジャー
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