「2019年度 慶應義塾大学 法学部」で出題
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問題3 アレクサンドル2世は,クリミア戦争後、「大改革」を実施し,その一環としてロシア各地に地方自治機関(53)(54)を設置した。
32. ゼムストヴォ 33. ソヴィエト 38. ドゥーマ 54. ミール 64. レーテ
(編註:関係のある選択肢のみ抜粋)
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解答解説
■「入手困難な教科書にしか載っていない用語」を出す、という悪魔のような作問
山川の『新世界史』にだけ記載があるシリーズ。念のため説明すると、7冊ある検定教科書のうち、他が万単位の部数で発行されているところ、この『新世界史』だけは5千部しか出ていない。要するに採用している高校がほとんどなく、教員や塾・予備校講師しか持っておらず、そもそも入手困難ということである。
にもかかわらず『新世界史』にしか収録が無い用語がかなりあり、しかも本来それを頻度①*として拾うべき用語集が(おそらくわざと)拾っていないので、受験生にとっては事実上範囲外であるにもかかわらず、大学側は範囲内外のグレーゾーンとして出題できてしまう、悪魔のような存在が『新世界史』である。
(*用語集頻度…用語集では、収録された用語の横には丸数字がついており、これが検定教科書に載っていた数を示している。たとえば「シュメール人⑦」であれば、7冊の教科書に「シュメール人」という記載があることを示す。)
特に慶應大の法学部と文学部は近年『新世界史』にしか載っていないシリーズを多用してきており、もはや「慶大法学部・文学部対策として『新世界史』は買って読んでおいても損は無い」レベルになってしまった。非常に良くない現象であるので、本企画『絶対に解けない受験世界史』ではこのシリーズを基本的に収録対象としている。
■正解は「ゼムストヴォ」
前振りが長くなってしまったが、閑話休題。正解はゼムストヴォ。食糧管理や道路整備、郵便などの民生面での地方自治の達成が目指され、権限は弱かったものの、ロシアの地方自治の出発点としてロシア社会に与えた影響はそれなりに大きかったらしい。ドストエフスキーやトルストイの小説を読んでいるとそれなりの頻度で登場して上述のような注がついているので自然と覚えるが、そういう事情で覚えていた受験生がいたら文学青年として極めて有望株である。ほとんどの受験生はミールと間違えたと思われる。
稲田 義智
受験世界史研究家
受験世界史研究家。東京大学文学部歴史文化学科卒。世界史への入り口はコーエーの『ヨーロッパ戦線』と『チンギスハーン・蒼き狼と白き牝鹿IV』だったが、実は『ファイナルファンタジータクティクス』と『サガフロンティア2』の影響も大きい気がする。一番時間を費やしたゲームは『Victoria(Revolution)』。ゲームしかしていなかった人生だったが、奇縁にて『絶対に解けない受験世界史シリーズ』(パブリブ刊)を出すことになった。楽しい執筆作業だったが、ちょっと当分入試問題は見たくない。
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