【絶対に解けない受験世界史】「意味不明なほど難しく、法政大入試の歴史に残してよい」――赤本も解説を放棄した「激烈な難問」、解いてみる?

【絶対に解けない受験世界史】「意味不明なほど難しく、法政大入試の歴史に残してよい」――赤本も解説を放棄した「激烈な難問」、解いてみる?
(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載では、受験世界史研究家・稲田義智氏の著書『絶対に解けない受験世界史3』(パブリブ)より一部を抜粋し、大学入試で実際に出題された世界史の「難問」を紹介していきます。本書における難問とは、「一応歴史の問題ではあるが、受験世界史の範囲を大きく逸脱し、一般の受験生には根拠ある解答がおおよそ不可能な問題」。受験生から一般の歴史好き、腕に覚えのある方に至るまで、ぜひチャレンジしてみてください。

「2017年度 法政大 2/12実施」より

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問題1 (編註:宋代中国の話題として)黄河流域と長江流域、そして沿海海港都市が水運で結ばれている利を生かして,[ B ]と呼ばれる物流を担う移動商人が登場し,運送ネットワークが構築された。加えて,消費地で店を持ち小売する[ C ],そして[ B ]と[ C ]を仲介する仲買業者である[ D ]といった流通を担う組織が発達した。

 

問2 空欄[ A ]~[ Q ]にもっとも適したものを以下の語群から選び,その記号をマークせよ。

 

a 会館  b 瓦子  c 牙人  d 客商  f 行  g 公行  I 互市場  j 作  k 坐賈  l 荘客  q 茶館  s 鎮  v 客家

(編註:関係のある選択肢のみ抜粋)

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解答解説

意味不明なほど難しかった2/12日程。第1問はまさに拷問のような構成

この2/12日程は全体的に意味不明なほど難しく、法政大入試の歴史に残してよい。早稲田大の入試として見たとしても十分に難しい水準で、法政大の受験生の層に鑑みると狂気的と言えよう。特にこの第1問は全て中国史で、隙無く難問が続く拷問構成である。しかし、巧妙に用語集を見て作ってある問題もかなり多く、それらを慎重に取り除いた結果、収録対象となったのは3つだけであった。

 

■これだけどうしようもない中国史の問題も珍しい

本題。いきなり激烈な難問で、選択肢には普通の受験生は見たことの無い用語が並ぶ。範囲内の用語で削れるのはaの会館、fの行、gの公行、iの互市(場)、jの作、sの鎮、vの客家くらいか。あとはqの茶館はどう見ても違いそうということで削れるとしても、残った選択肢が多すぎて消去法を働かせようがないし、漢字の字面からそれっぽいものを当てはめようとしても、似たような用語が多すぎてそれも難しい。これだけどうしようもない中国史の問題も珍しい。また、これだけ異様な問題であったにもかかわらず、何の解説も載せずに淡々と解答だけ掲載した『赤本』は職務放棄では。

 

正解は、Bの行商人がdの客商、Cの小売商がkの坐賈、Dの仲買商人がcの牙人である。牙人は牙行・牙郎・牙儈という表現もある。その他の用語について。bの瓦子は商人のことではなく、宋代以降の都市で発達した盛り場のことを指す。劇場、寄席、飲食店、妓楼、茶館が建ち並んだ。荘客は商業とは全く関係の無い言葉で、佃戸の別称である。qの茶館は半ば一般名詞であるが、宋代以降の都市に発展した喫茶店のこと。

 

 

稲田 義智

受験世界史研究家

 

受験世界史研究家。東京大学文学部歴史文化学科卒。世界史への入り口はコーエーの『ヨーロッパ戦線』と『チンギスハーン・蒼き狼と白き牝鹿IV』だったが、実は『ファイナルファンタジータクティクス』と『サガフロンティア2』の影響も大きい気がする。一番時間を費やしたゲームは『Victoria(Revolution)』。ゲームしかしていなかった人生だったが、奇縁にて『絶対に解けない受験世界史シリーズ』(パブリブ刊)を出すことになった。楽しい執筆作業だったが、ちょっと当分入試問題は見たくない。

 

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※本連載は、稲田義智氏の著書『絶対に解けない受験世界史3』(パブリブ)より一部を抜粋・再編集したものです。

絶対に解けない受験世界史3

絶対に解けない受験世界史3

稲田 義智

パブリブ

悪問・難問・奇問・出題ミス…大学入試にはたびたびこれらの「誰にも解けないような問題」が登場し、受験生を悩ませてきました。 しかし、2017年に前作『絶対に解けない受験世界史2』を出版して以来、早稲田や慶應では悪問…

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