調査官も思わず「本当に裏金なの?」…200万円以下を「50回以上に分けて」海外から受取。税関の目をすり抜ける「まさかの脱税手法」【元マルサの税理士が解説】

調査官も思わず「本当に裏金なの?」…200万円以下を「50回以上に分けて」海外から受取。税関の目をすり抜ける「まさかの脱税手法」【元マルサの税理士が解説】
※画像はイメージです/PIXTA

2003年、BSE(牛海綿状脳症)によってアメリカ産牛肉が輸入停止となった際、実は日本でこの騒動を悪用した「脱税スキーム」が流行り、脱税事件が多発していたと、元マルサの税理士である上田二郎氏はいいます。筆者の実体験から、当時日本で起きていた“巨額の脱税事件”の裏側をみていきましょう。

牛肉の輸入停止→豚肉が高騰…ここに“脱税の隙”が

脱税の背景にBSE。2001年9月、日本で初のBSE感染牛が発見され、政府による「全頭検査」が実施された。人体への影響もあるとされたために多くの人が牛肉を敬遠し、豚肉の価格が急騰して大きな社会問題になった。

 

2003年にはアメリカでもBSEの疑いがある牛が発見され、日本はアメリカ産の牛肉の輸入停止を決定。スーパーの棚から牛肉が消えた。

 

国内養豚業者を保護するために設けられた豚肉の差額関税制度。基準価格を設定し、それ以下で輸入すると基準価格と輸入価格との差額に関税を賦課する。

 

基準価格は国内産豚肉の流通を阻害しない価格に定められ、2003年(強制調査時)の基準価格は1㎏あたり410円に設定されていた。

 

たとえば1㎏の豚肉を300円で輸入すると、410円との差額110円が関税として徴収されるが、1,000トンなら1.1億円だ。この関税を免れるために転売(架空取引)をして、1㎏410円まで吊り上げてから輸入すれば関税が0円になる。

 

しかし、価格の吊り上げが海外で行われるため、日本の税務当局は手も足も出ないばかりか、賦課された関税は輸入業者の仕入額(経費)になる。

 

つまり、もし税務調査によって関税逃れの架空取引(仕入れの水増し)を否認しても、同額の関税が賦課されるだけで会社の利益は行って来い。よって、法人税の脱税が成立しないことに加え、そもそも差額関税の監視は税関の役目だ。

脱税スキームを見破ったのは新聞記事

2003年9月、新聞にBSEの特集が見開きで掲載されていた。BSEが発生したのは2001年9月。このキーワードが2ヵ月前の人事異動直後にある査察官から受けた報告を呼び起こした。

 

査察官「前の班で追いかけていた事案なのですが見てもらえますか?」

 

筆者「外資系銀行の口座か……。海外からの送金?」

 

査察官「はい。なんのお金か皆目見当がつきません。そもそも脱税なのかどうか」

 

筆者「海外は治外法権だからね。強制調査ができないから実施班が見向きもしない」

 

査察官「そうですよね。前の班でも無理かな? と言ってました」

 

筆者「入金が2001年11月から突然始まる。たまりっぱなしで1.8億円か……。悪いお金の匂いがプンプンするね」

 

海外からの振込が2001年11月から始まっているが、口座のお金が脱税資金なのか、正当なお金(海外宝くじの当選金など)なのかは分からない。判明しているのは、ターゲットF社には海外からのコンサルタント収入があることと、F社は国内の食肉関連会社と取引があることだけだ。

 

BSEの発生は2001年9月。海外取引なら決済は2ヵ月遅れる。当時、スーパーでは牛肉の棚が空っぽになって、代替品の豚肉が高騰して品薄にまでなっていた。牛肉がダメなら豚肉だろう。巨額脱税の全体像が解けかかっていた。

 

この年、東京国税局管内でマルサが2件の養豚業者を摘発していた。これまで筆者は養豚業者の摘発を聞いたことはなかったが、マルサが動いているのだから豚肉業界が賑わっていることは間違いない。

 

しかし、国内養豚業者の規模は小さく、豚肉消費の大半は輸入でまかなっている。養豚業者を保護するための差額関税制度があるくらいだ。保護対象の養豚業者でさえ脱税で摘発されているなら、輸入業者はもっと儲かっているはずだ。

 

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