立場の弱い労働者を守る「労働法」
現在、日本では、働いている者のうち、雇われている人の割合が、およそ9割に上ります。そのような人たちを守るための法はないのでしょうか?
労働法という分野がこれに当たります。……と言っても、労働法という名前の独立した法典があるわけではありません。労働者を対象にして、労働をめぐる関係について定める諸法をまとめて、労働法といいます。
労働法の分野は、大きく、
(1)年少者保護、労働災害に対する補償、解雇制限など、労働者の最低労働条件を定めるもの
(2)労働者に対して、労働組合の結成を認め、その組織に団体交渉権や争議権を与え、使用者との集団的交渉のルールを定めたもの
(3)労働者の勤労権を確保するための国家の関与を内容とするもの
の3本の柱があります。
このうち、(1)については、労働基準法、労働契約法、最低賃金法、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)などの法律があります。
個人は国家の干渉を受けることなく自己の意思に基づいて自由に契約を締結することができます(契約自由の原則)が、社会的・経済的に強い立場にある使用者と、弱い立場にある労働者との間で本当に自由な契約をすることは困難です。
そこで、契約自由の原則を修正して、「この条件以上でしか労働者を雇ってはならない!」というルールを設けて、労働者を守っているのです。
労働契約においては、家族への愛情、健康、仕事のやり甲斐など、自由な市場原理では満たされない要素も多く、適切な規制原理こそ重要なのです。
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
また、(2)については、とくに、労働組合法が中心となります。そもそも、日本国憲法28条が、労働者が団結する権利(団結権)、使用者と交渉する権利(団体交渉権)、要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権)を保障しています。労働者が団結して労働組合を結成し、使用者と対等な立場で交渉し、よりよい条件を獲得するのです。
日本の場合、産業別、地域別、職業別ではなく、企業別に労働組合が組成されてきました。しかし、組織率の低下、連帯の困難性、活動の低迷など、以前に比べて企業別労働組合の存在感は薄まっており、多くの問題も抱えています。
遠藤 研一郎
中央大学法学部
教授
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