年間医療費90万円×団塊世代の人数
2025年、いよいよすべての団塊世代が75歳を迎え、後期高齢者医療制度に加入することになり、日本の人口の2割が後期高齢者となる見込みです。
厚労省によれば、介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は、男性は73歳、女性は75歳だと言われており、後期高齢者医療制度に加入する時点ですでに健康寿命の平均値に到達していることになります。
令和2年の厚労省の統計によれば、75歳以上の後期高齢者1人あたりの年間医療費は平均で92万円となっており、これは、75歳未満の平均値22万円の4倍以上の金額にも上ります。
今後、団塊の世代が後期高齢者になることで、医療費はますます膨張していくことが予想されます。
一定以上の収入がある後期高齢者、窓口負担が「増加」
このまま国民医療費が増え続けると、国の財政にも深刻な影響が及びます。
これを受けて、令和4年から高齢者の医療費負担が見直され、単身世帯で年収200万円以上、複数人世帯で年収合計320万円以上の後期高齢者は、医療費の窓口負担が、1割から2割に引き上げられることになりました。
団塊世代の方には不公平に思えてしまうかもしれませんが、現在日本における65歳以上の高齢者は4,000万人。人口の35%をも占めているため、やむをえない改正といえるでしょう。
公的介護システムも崩壊危機へ
高齢者の増加で、医療制度と同様に深刻な影響を受けるのが介護制度です。
介護サービスを受けようとしても、地域によっては介護認定が厳しく、実質的な要介護状態になっても、なかなか介護施設に入れないケースもあります。
しかし、日本の要介護の認定率は、75歳以上では約3割ですが、85歳以上になると約6割に上昇し、90歳を超えたら7割にのぼります。年齢とともに、確実に要介護状態になっていくことがわかります。
在宅での介護を選択した場合、介護にかかる費用としては、介護サービス利用料のほか、ポータブルトイレやシャワーチェアなど福祉用具のレンタル費、おむつ代、バリアフリーにするための住宅改修費などが挙げられますが、これらの費用は、自己負担割合が1割、要介護1の人なら、介護サービスを限度額まで利用すれば自己負担分は1割の1万7,000円ほどとなります。
介護施設を選択した場合でも、介護サービスは介護保険を利用するため、支給限度額までは自己負担割合分のみの支払いとなり、毎月3万円ほどでしょう。
しかし、施設の場合は居住費や食費、管理費など、介護保険の対象外となる費用が多く発生するので注意が必要です。
これらを合計した場合、施設に入ると、少なくとも毎月10万円はかかります。東京都で民間の介護施設に入ると、毎月30万円を超えることも想定され、公的年金だけで介護費用を賄うのも難しくなる方も多いでしょう。
介護保険の対象となる費用が限度額を超えた場合は、超えた分が全額自己負担となりますが、限度額を超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」の制度があります。一般的な所得の世帯では、1ヵ月の自己負担の限度額は4万円程、高額所得者でも14万円となっています。
郊外の不動産は売却・換金が困難に
内閣府の調査によれば、団塊世代の持ち家率は8割超と、大半の人が不動産を持っているため、医療費や介護費用のために自宅を売ろう、と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、人口減少の影響で、中古不動産を購入する人は少なく、自宅を売却しようにも、都心や駅近など、よほど立地のいいところでないとなかなか売ることができない、というのが現状です。また、更地にして売るためにも、家屋の解体費用がかかります。
持ち家が神奈川、埼玉、千葉などの郊外で、最寄り駅から遠い立地の場合は、売れたとしても二束三文、もしくは売れない可能性もあるでしょう。
老後資金確保のために自宅の売却を考えている方は、状況がこれ以上悪化する前に自宅を売り、住み替えをすることをおすすめします。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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