前回は、 医療費の負担を軽くする「高額療養費制度」があれば医療保険は不要であることを説明しました。今回は、医療保険で「損をしない」ことは可能なのかどうかを見ていきます。

医療保険に貯蓄機能を求めるのは得策ではない

医療保険は終身タイプを選ぶ人が多くなっています。高齢になってからのほうが入院する可能性は高いのに、途中で保障が切れる保険に入っていてもあまり意味がないからです。終身タイプの保険は、定期タイプの保険に比べると保険料が高くなりがちですが、掛け捨てであれば比較的安く抑えられます。

 

解約したときや死亡したときに、「解約返戻金」、あるいは「死亡保険金」として、払い込んだお金が戻ってくる商品もありますが、掛け捨ての保険に比べて保険料がかなり高くなります。

 

それに、ずっと医療の保障を受け続けたいのであれば、途中で解約することはできません。解約するにしても、解約返戻金の返戻率(解約返戻金が、これまでに支払った保険料に対して何パーセントあるのかを示すもの)は、時期によって異なります。

 

契約から何年目に解約返戻率が何パーセントになっているかということは、契約時にチェックすることができますが、元本を上回るときもあれば、大きく下回ってしまうときもあります。

 

したがって、自分が解約したいタイミングで、解約返戻率が有利な状況になっているとは限らないわけです。

 

このように、医療保険で「損をしないために、掛け捨てじゃないものを選ぼう」と考えると、いろいろ問題が出てきます。そのため、医療保険に貯蓄機能を求めるのは得策ではないでしょう。

40年間支払う保険料を「回収」できる確率は低い

だからといって掛け捨てならば医療保険に入ってもいいかといえば、そういうわけでもありません。掛け捨てタイプは保険料が安いことが特徴ですが、こんなふうに考えてみてください。25歳で保険に入り、65歳まで毎月5000円支払ったとしましょう。40年間で支払う保険料は、約240万円です。

 

掛け捨てならば、入院・手術をしない限り、この240万円は戻ってきません。ですが、一生涯でこの240万円を回収するほどの入院や手術を経験する人は、恐らくそれほど多くないでしょう。

 

仮に、1カ月以内の入院を5回体験したとしても、前回お伝えしたように高額療養費制度があるので、1回あたりの負担額は8万円強。5回で50万円にも達しないくらいです。240万円には到底及びません。

 

預貯金がある程度あれば、医療保険は不要ということになるのです。

本連載は、2014年8月30日刊行の書籍『30歳からはじめる一生お金に困らない蓄財術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本書は情報の提供および学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資の成功を保証するものではなく、投資の際は必ずご自身の責任と判断で行ってください。本書の内容に関して運用した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。本書に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後変更されることがあります。

30歳からはじめる 一生お金に困らない蓄財術

30歳からはじめる 一生お金に困らない蓄財術

工藤 将太郎

幻冬舎メディアコンサルティング

社会保障制度の財源が危ぶまれ、賃金格差が広がる今の日本にあって、これから結婚・子育て・マイホームの購入・老後を迎えようとする世代には将来のお金に対する不安が広がっています。 将来のお金が不安な時、たいていの人は…

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