業種・規模・商材が似た日系企業と外資系企業を比較すると、外資系企業のほうが給与が高いイメージがあります。両者の利益率に大きな差がある訳ではなさそうですが、その年収差は平均25%に上るといいます。それでは日系企業・外資系企業の給与の差は何に起因するのでしょうか。東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が解説します。
会社の規模や利益率は同等でも…〈外資系企業の給与〉が日系企業より「25%」も高いワケ【転職のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

外資系企業はまさに“ハイリスク・ハイリターン”

一方、外資系企業はどうでしょうか。

 

簡潔にいうと、日系企業とはあらゆる面で反対になっています。外資系企業も、日本でビジネスを展開している以上は日本の法律を遵守しなければならない面は多々ありますが、最終的に意思決定する経営中枢は日本支社ではなく海外の本社やリージョンです。そのため、企業の慣習や文化が日系企業のそれとはかけ離れていることがよくあります。

 

今回のテーマである給与体系についても、業種や規模が同等で、似た商材を扱う企業同士を比較した場合、これまでに筆者がコンサルティングした転職者の実績ベースでは、外資系企業の年収は日系企業のそれよりも平均25%高くなっています。

 

ただし、先ほども触れたように外資系企業には解雇されるリスクがあることを忘れてはなりません。

 

「本人のローパフォーマンス」「会社の人員削減方針」「支社の撤退」など理由はさまざまですが、いつものように意気揚々と出社したところ直属の上司に呼び出され、“You’re fired”(きみは解雇だ)と告げられる可能性が常にあるのです。

 

日系企業に勤務していれば今期の成績が不振でも前年、前々年の推移を見て、経済環境の変化など不振の原因が検討され「来期は頑張ろう」ということになります。人事評価についても、日系企業では長期的に判断してもらえることは多くの人が実感しているところでしょう。

 

一方で、外資系企業の人事評価はごく短期的な判断に基づいています。

 

たとえば四半期ごとの成績をポイント化して基準レベルに達しないと警告が与えられ、その警告が2回出た時点で退職勧告されるような仕組みもあります。反対に、単年で好成績を上げれば報酬も一気に増える可能性があるということ。日本のように、一人前になるまでの3年間は給与は据え置き、というようなことは起こり得ないのです。

 

外資系企業には従業員を「養う」とか「守る」といった概念がありません。従業員は常に失職の危険と隣り合わせになっており、いうなれば「危険手当」がついている分、年収が高いということになりそうです。

 

「労働三法」によって従業員が手厚く保護され、雇用が安定している分、相対的に給与水準が低い日系企業か、はたまた常に解雇のリスクがつきまとうものの、高いパフォーマンスを発揮すれば高額の報酬をめざせる外資系企業か……。どのようなキャリアを選択するかは人それぞれですが、「給与」だけで判断すると後悔する可能性が高いでしょう。外資系企業の給与が高い背景を認識した上で、自身にフィットするキャリアプランを描いてみましょう。