外資系企業と日系企業の年収差
外資系企業と日系企業の両方で仕事をしたことがある人は、かなり少数派だと思います。全労働人口の数パーセントといったところではないでしょうか。
したがって、外資系企業に勤める人は日系企業について、日系企業に勤める人は外資系企業について、何を生業とする会社かというのはある程度イメージできたとしても、それぞれの会社の内部事情や文化などの実態については知る機会が少ないようです。
そこで今回は、日系企業と外資系企業の年収差について考えていきましょう。
一概に言い切ることはできませんが、一般的には「日系企業より外資系企業のほうが年収が高い」と考えられています。しかし外資系と日系を比較するにしても、コカ・コーラとトヨタ自動車を比べるのでは、あまり意味がありません。似たような業界・業種、または類似した商材を扱っている企業を比較をするというのが前提になります。
その上で、なぜ外資系企業と日系企業で年収の差が出るのか考えてみます。
まず、年収が高い傾向にある外資系企業は利益率が高く、相対的に年収が低い日系企業では利益率も同様に低いのかというと、そうは言い切れません。なぜなら、年収差は雇用形態から派生する人事評価制度の違いにより生まれるためです。
どういうことかといえば、少々暴論にはなりますが、外資系企業は比較的雇用流動性が高く、言い換えると「常に」解雇される可能性があります。しかし日系企業では、突然の解雇いうことは余程のことがない限り起こり得ません。
この違いこそ、外資系企業と日系企業の年収差に大きな影響を及ぼす大きな要因の1つです。
日本企業に特有の従業員を「養う」という考え方
では日系企業について具体的にみていきましょう。
昔、社会科の授業で習ったと思いますが、日本には「労働三法」という法律があります。日本でビジネスを展開している企業は多かれ少なかれこの労働三法、すなわち「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」の影響下にあり、安易に労働者を解雇できないことになっています。
本人が大きな不祥事を起こしたり、企業の経営が危機に瀕したりしない限り、正規雇用の従業員を簡単に解雇することはできません。日本はここでも理念ある法治国家なのです。
そんな日本においても、「終身雇用の崩壊」が叫ばれて久しく、この風潮は雇用流動性の向上に寄与しています。しかし、それは法令にまでは影響を及ぼすものではありませんでした。すなわち労働基準法などはかなり昔の制定時の法解釈のまま、現時点でも立派に機能している訳です。
雇う側の論理に立って考えれば、「解雇できない」ということは、何らかの問題を抱えても雇用し続けねばならないという重荷を背負うことになります。
ここで着目すべき点は、プロフィット・シェア(利益配分)の考え方において、ハイパフォーマーとローパフォーマーの差をなるべく平準化させていることです。もう少しわかりやすくいえば、日系企業では、ものすごく活躍している社員に活躍していない社員を養わせることを美徳と捉え、パフォーマンスを発揮できなかった人も手厚く保護されているということになります。
日系企業の給与体系は、これを拒絶しないというところからスタートしています。
もちろん現在はこのような前提が崩れ、信賞必罰が人事評価にリンクするようなケースも多くみられるようになってきました。それでも、まだまだ大多数の企業において前述したような慣習が残っているようです。労働三法と人事評価制度が結びついている、というのが実態ではないでしょうか。
就業規則を変える際も、従業員に有利な変更は容易ですが、従業員の不利益になる変更の場合は労働側の代表者の署名が必要になることがあります。このように、非常に手厚く労働者を「保護」しているのが日系企業の特徴です。