(※写真はイメージです/PIXTA)

事故や病気で夫が急逝した場合、のこされた妻には「遺族年金」が支給されます。しかし、妻が専業主婦などで夫が家計を支えていた場合収入が大きく減り、最悪の場合家計破綻に陥る可能性があると、牧野FP事務所の牧野寿和CFPはいいます。事例をもとに、詳しくみていきましょう。

悲しみに浸っていられない…夫の死後、必要な手続き

心身ともに憔悴しきったBさんですが、Aさんが亡くなったことからさまざまな手続きが必要です。

 

Bさんは親に相談したところ、もともと知り合いだった筆者を紹介してくれました。Bさんは早速、Aさんが亡くなった後の諸手続きについて問い合わせ。連絡を受けた筆者は、「まずは銀行と市役所、社会保険事務所の窓口へ行くように」と伝えました。

 

1.銀行…住宅ローンは団信のおかげで支払い免除に

Bさんは筆者の助言に従い、まずは住宅ローンを借り入れている銀行に向かいました。窓口で事情を説明すると、下記の内容が伝えられました。

 

・亡くなったAさんは「団体信用生命保険(団信)」に加入していたため、生命保険会社からの保険金で住宅ローンが返済され、約870万円の債務がなくなること

 

・住宅ローン返済中は銀行の担保になっていた自宅の土地建物の抵当権抹消登記や、Bさん名義に相続登記をする手続きが必要になる。そのためには、登録免許税などの諸税や諸費用が必要なこと

 

・夫の預金の相続手続きについて

 

また、店舗内で税理士による無料税務相談会が開催されていたため、Bさんは税理士にも相談。Aさんの主な遺産は戸建て住宅と2~300万円の貯蓄であると伝えたところ、「いずれも相続税の課税対象になる金額ではなく、相続税は課税されない」と言われ、Bさんはひとまず安心しました。

 

また、税理士からはBさんに支給される死亡保険金や死亡退職金についても説明を受けました。

 

2.市役所…Bさんは「第3号被保険者」から「第1号被保険者」に

次にBさんは市役所の保険窓口に行き、国民年金と国民健康保険加入の手続きをしました。

 

A家はこれまで、会社員のAさんは第2号被保険者で、専業主婦(年収130万円未満)であるBさんは第3号被保険者となっていました。第3号被保険者の場合、社会保険料はAさんの給与から一括して天引きされるため、Bさんは納める必要はありません。

 

しかし、今後Bさんは「第1号被保険者」となるため、60歳まで国民年金保険料を、また母子ともに国民健康保険料の納付が必要になります。

 

なお、息子は来年20歳から国民年金保険料を納める必要がありますが、大学や専修学校等学生の在学期間中は、「学生納付特例制度」を申請して適用されれば保険料の納付が猶予されます。また、該当期間中に障がいをもったり死亡した場合には、障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されます。

 

3.社会保険事務所…遺族年金の額にショック

最後にBさんは社会保険事務所を訪れ、遺族厚生年金を受給するための手続きを行いました。

 

すると、Bさんの遺族厚生年金受給額は173万円(月額14万4,000円)であると判明。「夫の給与の3分の1しかないじゃない……」とBさんは驚きました。

 

一連の手続きを終え帰宅したあと、Bさんは今後の収支について大まかに計算してみました。すると、Aさんに掛けていた生命保険の死亡保険金やC商事の死亡退職金が2,000万円近く入るものの、息子の教育費でその半分近くがなくなってしまうことが判明。

 

これまで夫の給与でなんとか生活してきたのに、遺族年金受給額は夫の収入の3分の1。足りない分を貯蓄から取り崩して生活したら、あと10年経って60歳になるころには家計が破産してしまう……これでどう生きろというの?

 

Bさんは絶望感に襲われました。

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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