51歳の独身Aさん…ある日気づいた82歳父の「異変」
Aさん(51歳)は、都内の精密機器メーカ―で営業課長として働いています。独身でひとりっ子のAさんは、父(82歳)が40年前に建てた実家に、母(80歳)と3人で暮らしていました。
Aさんの年収は約500万円です。両親の主な収入は年金で、父が228万円(月額19万円)、母は48万円(月額4万円)。夫婦であわせて276万円(月額23万円)を受給しています。
実家暮らしとはいえ、職場まで片道1時間以上と遠距離通勤のAさん。業務が多忙なこともあり、両親と一緒に食事をとるのは休日の夕食ぐらいのものです。母とはよく話しますが、元来寡黙な父とはあまり話すことはありませんでした。
しかし、そんな父がここのところ「お前、いくら給料もらっているんだ」と話しかけてきます。Aさんは「なんだよ急に……手取りで35万円くらいかな」としぶしぶ答えると「そうか。貯金はしておけよ」とそれきりです。
別の話題になっても、「お前、給料はいくらだ」と食事のあいだに何度も訊ねてきます。Aさんは、「父ももう歳だから、忘れっぽくなったんだろう」と思っていましたが、母によると最近同じことを繰り返し聞くのは日常茶飯事。散歩に出かけたあと、自分の家がわからなくなったこともあったそうです。改めて父の顔を見てみると、以前の父とはなにか違っています。
「親父はもしや、認知症になったんじゃないかな……」母にそう言うと、母も同じ思いでした。
数日後、Aさんは会社を1日休んで、父をかかりつけの病院(脳神経内科併設)に連れて行きました。すると、初期の認知症※であることが判明。
※ 生命保険文化センターによると、65歳以上の5.4人に1人が認知症患者。
その医師はAさんに、地元にある「地域包括支援センター」で相談して、介護認定を受け介護サービスを利用するよう勧めました。
父は「要介護度1」に認定
Aさんは早速父とともに地域包括支援センターへ。父は要介護認定を受け、「要介護度1」と認定されました。
職員からは、「今後、お父さまは介護保険の介護サービスを1割の自己負担で受けることができます」「今日認定した要介護度は、1年~3年で見直されます」といった説明を受けました。
結果を知った両親は、ただおろおろするばかり。Aさんは両親が急に年を取ったように見え、「両親の面倒を見るのは自分しかいない※」と思ったそうです。
※ 内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、主な介護者は要介護者と同居している人が54.4%。介護者の続柄は、配偶者:23.8%、子:20.7%、子の配偶者:7.5%。そのうち男性:35.0%、女性:65.0%となっている。
とはいえ、今後どのくらい介護費用が必要になるのかわかりません。また、独身であるAさんは自身の将来も心配になってきました。そこで、以前伯父母が相続について相談をしたといっていた筆者のFP事務所に行ってみることにしました。
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