●日米とも金融政策は据え置きを予想、仮に日銀YCC再修正なら長期金利上昇、円高、株安か。
●決算は米国で総じて好調も長期金利上昇が株価の重し、日本は業績予想や企業改革に注目。
●日米で金融政策会合が無難に終了し、業績の底堅さと米雇用減速が確認されれば株価反発へ。
日米とも金融政策は据え置きを予想、仮に日銀YCC再修正なら長期金利上昇、円高、株安か
今週は日本と米国で重要イベントが目白押しとなっています。そこで、以下、主なイベントについて要点を整理し、想定される市場への影響について考えます。まず、金融政策会合について、日本では10月30日、31日に日銀の金融政策決定会合が開催されます。基本的な見方は10月25日付レポートの通りで、日銀は今回、賃金と物価の十分な情報やデータがまだそろっていないとし、政策を据え置くと予想しています【図表】。
緩和維持の場合、国内市場はいったん長期金利低下、円安、株高の反応が見込まれますが、仮に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)再修正のサプライズとなれば、逆の反応となる恐れがあり、市場への日銀の丁寧な説明が求められます。一方、米国では10月31日、11月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。今回は「利上げ見送り」、「今後の判断はデータ次第」という結果で無風通過とみています。
決算は米国で総じて好調も長期金利上昇が株価の重し、日本は業績予想や企業改革に注目
次に、企業業績について、米国では主要500社の約半数が10月27日時点で7-9月期の決算発表を終え、8割強が市場予想を上回る1株あたり利益(EPS)を計上しました。米ハイテク大手のマイクロソフト、アルファベット、メタ、アマゾン・ドット・コムは、クラウドやネット広告などが好調で、いずれも売上高とEPSが市場予想を上回りました。ただ、決算発表前から先週末までの株価は、アマゾンを除く3社がマイナスとなっています。
背景には、米長期金利の高止まりがあると推測され、ナスダック総合株価指数、S&P500種株価指数、そしてダウ工業株30種平均も、足元でさえない動きが続いています。今週は、日本でも半導体製造装置、電子部品メーカーなどの決算発表が予定されており、業績予想の上方修正や資本効率改善などの動向が注目されます。ただ、日米とも好業績が株価を押し上げる展開となるには、少なくとも米長期金利の一服が待たれる状況にあると思われます。
日米で金融政策会合が無難に終了し、業績の底堅さと米雇用減速が確認されれば株価反発へ
最後に、経済指標に目を向けると、米国では10月31日に雇用コスト指数、11月1日に雇用動態調査(JOLTS)、ADP全米雇用リポート、米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数、2日に非農業部門の労働生産性、3日に雇用統計、ISM非製造業景況感指数が発表されます。雇用関連の指標が多く、労働市場の減速傾向が確認されれば、米国市場では、長期金利低下、ドル安、株高の反応が予想されます。
現在、前述の米主要3指数とも200日移動平均線を割り込み、日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)は、同線を割り込んでいないものの、接近しつつあります。今週、日米の金融政策会合が波乱なく終了し、決算で業績の底堅さや、米指標で労働市場の減速傾向が確認されれば、日米とも株価の反転上昇が期待されます。ただ、実際にその流れになるか否かは、金融政策、企業決算、経済指標、それぞれの見極めが必要になります。
(2023年10月30日)
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『今週の「日銀会合」と「FOMC」、波乱なく終わり業績の底堅さと米雇用減速が確認されれば「株価反発」へ【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト