(※画像はイメージです/PIXTA)

昨今、法令の基準をみたさない、いわゆる「違法電動アシスト自転車」が公道を走行していることが問題になっている。そんななか、10月25日に警察庁と国民生活センターが、「電動アシスト自転車」として市販されている9車種について、法令の基準に適合していないことを公表した。もし違法電動アシスト自転車の事故が起きた場合、加害者の被害者に対する民事責任はどうなるのか。また、自転車保険等は適用されるのか。取材した。

自転車保険は「使えない」

自転車で走行中に事故を起こした加害者が高額な賠償責任を自力で支払えない場合でも、通常は、自転車保険、または火災保険等の個人賠償責任特約に加入されていればカバーしてもらえる。

 

それでは、違法電動アシスト自転車による事故の場合も補償してもらえるのか。日本損害保険協会の広報担当の木村拓登氏はいう。

 

【日本損害保険協会 広報担当 木村拓登氏】

「違法電動アシスト自転車は、法的には自転車ではなく『原動機付自転車』にあたるので、自転車保険の補償対象外です。

 

また、火災保険等の個人賠償責任特約は『自動車事故以外の日常生活の事故』が対象ですが、『原動機付自転車』は自動車に含まれるので対象外です。

 

いずれにしても、補償対象とはなりません。」

 

違法電動アシスト自転車は保険で一切カバーされないということになる。加害者は、一生を棒に振ってしまうほどの高額な損害賠償債務を負う可能性もあるということである。

「被害者の救済」に問題も

このように、違法電動アシスト自転車で公道を走行していて事故を起こしてしまった加害者は、莫大な損害賠償金の支払い義務を負う可能性があるだけでなく、損害保険によってカバーしてもらうこともできない。

 

したがって、もし、加害者に資力がなければ、被害者は事実上、泣き寝入りせざるを得ないことになりかねない。

 

【荒川香遥弁護士】

「被害者としては、違法電動アシスト自転車を製造販売したメーカーに対しても損害賠償責任を追及する方法が考えられます。

 

ただし、事故自体はあくまでも加害者の過失によって発生したものなので、製造販売したメーカーが公道で走ることを想定して販売したなど限定的な事例では損害賠償請求が認められる可能性はあるかもしれませんが、一般的には難しいといえます。」

 

現状、警察庁においては、製造・販売事業者に対し、購入者・消費者への周知、既に市中に出回っている車両の回収等を要請している。しかし、今この瞬間にも、違法電動アシスト自転車は市中を走行している可能性があり、それを逐一取り締まることは困難である。

 

もし事故が起きてしまった場合、被害者の救済の実効性をどのように確保するのか。メーカーの道義的責任が問われるのはもちろんのこと、場合によっては今後、国会・行政による何らかの対応が求められる可能性がある。

 

 

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