(※画像はイメージです/PIXTA)

JAF(日本自動車連盟)は10月23日までに、自動車ユーザーへのアンケート調査の結果を基に「2024年度税制改正に関する要望書」を作成し公開しました。自動車ユーザーに課される様々な税金についての問題点を指摘したうえで、自動車ユーザーの税負担の軽減を求めるものです。その内容について、税理士・黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ共同代表)が解説します。

◆自動車重量税の廃止

要望書は自動車重量税についても廃止を求めています。

 

もともと、自動車重量税は道路整備に充てるための「道路特定財源」でした。しかし、2009年の税制改正で「道路特定財源の一般財源化」が行われました。道路特定財源は、道路整備が進むにつれ、税収が歳出を大きく上回るようになっていました。それが問題視され、一般財源への組み込みが行われたのです。

 

なお、この後に述べる「ガソリン税」も、元来「道路特定財源」だったものが一般財源化されたものです。

 

JAFの指摘は、2009年時点で道路特定財源(自動車重量税)は存在意義を失っていたのだから、本来ならば廃止すべきだったというものです。

 

この点については、ガソリン税が国会の議決を経て道路特定財源から一般財源へと変わるプロセスで、課税の根拠が「変更」されたと考えざるを得ません。租税法律主義(憲法84条参照)の下、税制に関する基本事項は国会が決めることになっているからです。

 

ただし、一般財源に組み込まれた後の課税の理論的な根拠は、必ずしも明らかとはいえません。JAFはこの点を指摘していると考えられます。

 

◆ガソリン税等の「当分の間税率」の廃止

要望書はそれに加え、ガソリン税等の「当分の間税率」の廃止も求めています。

 

本来、ガソリン税の税率は「1リットル28.7円」です(本則税率)。しかし、現在のガソリン税は「1リットル53.8円」の「暫定税率」が適用されています。これはもともと、1974年に「道路整備の財源が不足している」という理由で、暫定的に引き上げられたものが、50年近く維持されているものです。あくまでも暫定的な税率だったはずということで、「当分の間(とうぶんのあいだ)税率」といわれているのです。

 

1974年当時、ガソリン税は「道路特定財源」でしたが、その後、道路特定財源は税収が歳出を大きく上回るようになりました。その時点で「道路整備の財源が不足している」という理由は失われたことになります。また、2009年には「一般財源化」もされました。

 

そうであるにもかかわらず、本則税率に戻されることなく、高い暫定税率が約50年間にわたって維持されているということです。この点についても、前述の自動車重量税と同じく、国会の議決を経て一般財源化された時点で「課税の根拠」がどう変更されたのかという問題が生じています。

 

なお、ガソリン税の税率については、もう一つ、「トリガー条項」の問題も指摘されます。トリガー条項とは、ガソリン価格が1リットル160円を超えた場合に自動的に税額が本則税率の「1リットル28.7円」まで引き下げられる制度です。しかし、このトリガー条項は2011年に起きた東日本大震災の後、いわゆる復興財源を確保するためという理由で凍結されています。

 

政府はガソリン価格の高騰への対策として、トリガー条項の凍結を解除して発動させるのではなく、事業者に「補助金」を支給する施策を採用しました。

 

実は当初、政府はトリガー条項の発動も検討していました。しかし、ガソリン税が国と地方自治体にとって重要な税収源になっていることを考慮した結果、補助金で対処することになったという経緯があります。

 

ところが、10月26日~11月1日の補助金の額は1リットル35.7円に達しており、トリガー条項が発動した場合のガソリン価格引き下げ額(1リットル25.1円)を上回っています。また、ガソリン価格高騰の原因とされるロシアのウクライナ侵攻や円安は直ちに収まる気配がなく、長期化する可能性があります。

 

さらに、補助金は元来その性質上、期間限定の暫定的な措置として位置づけられており、長期的・恒久的な制度として予定されてはいません。

 

したがって、もし、ガソリン価格の高騰がこのまま長期化・定着化すると、補助金ではなくガソリン税のトリガー条項の発動(「当分の間税率」の一時停止)、あるいは減税(「当分の間税率」の廃止等)という選択肢が改めて議論の対象となる可能性が考えられます。

 

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