(※写真はイメージです/PIXTA)

長年連れ添った夫婦であれば、残された側の喪失感は計り知れません。一人残されたあとの最期をどうするか……。本記事では、合同会社エミタメの代表を務めるFP三原由紀氏が、孤独への不安から「老人ホーム」への入居を娘に勧められたAさん(84歳)の事例とともに、老人ホーム入居の注意点について解説します。

クーリングオフで退去できたものの今後をどうすべきか?

このままでは、マンションの固定費がかかり続けるばかりです。固定資産税が年間27万円ほど、管理費・修繕積立金が月6万円ほどで合計年間100万円ほどの支出になります。

 

空室が続けば、いまの懐事情ではホームの費用と合わせて毎月24万円ほどの赤字です。入居一時金を支払ったあとの資産残高は1,300万円ほどですから、4年半ほどで底をついてしまいます。

 

これはマズイと、渋々Aさんに状況を伝えて母娘で話し合った末、退去することを決めました。というのも娘がマンションを売却して費用に充てようと提案したものの、Aさんが頑として首を縦に振らなかったからです。

 

それには理由があり、夫の遺言どおり相続財産を放棄してくれた娘に、マンションを遺してあげたいと内心思っていたのです。

 

幸いなことに、入居一時金については入居後90日以内のクーリングオフで全額返還されることがわかり、母娘で安堵しました。

 

事例の問題点

今回は、娘主導で、早急に老人ホームへの入居を決めてしまったことに問題がありました。

 

厚生労働省の調査によれば「介護付き有料老人ホーム」の入居者の約半数以上が要介護3以上であり介護度が高いことがわかります。Aさんは要介護1で、介護サービスを利用しながら自宅で自立して生活できている状態でした。

 

基本的にAさんは社交家で、かかりつけの病院でも通院日にランチする友人たちもいるほどです。時間がAさんの喪失感を癒し、いずれ元どおりの暮らしに戻っていけることでしょう。

 

また、娘にもきちんと伝えました。「私はできる限りここで暮らしたいの、難しくなったときは、金融資産で賄えるホームで構わないからお願いするわね。マンションはあなたに遺したかったの、どうするかは任せるので顧問税理士さんに相談してみなさいね」

 

まもなく85歳になるAさんですが、ここからの平均余命は8.6年、なるべく長く自宅で暮らせることを願ってやみません。

 

 

三原 由紀

合同会社エミタメ

代表

 

 

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