クーリングオフで退去できたものの今後をどうすべきか?
このままでは、マンションの固定費がかかり続けるばかりです。固定資産税が年間27万円ほど、管理費・修繕積立金が月6万円ほどで合計年間100万円ほどの支出になります。
空室が続けば、いまの懐事情ではホームの費用と合わせて毎月24万円ほどの赤字です。入居一時金を支払ったあとの資産残高は1,300万円ほどですから、4年半ほどで底をついてしまいます。
これはマズイと、渋々Aさんに状況を伝えて母娘で話し合った末、退去することを決めました。というのも娘がマンションを売却して費用に充てようと提案したものの、Aさんが頑として首を縦に振らなかったからです。
それには理由があり、夫の遺言どおり相続財産を放棄してくれた娘に、マンションを遺してあげたいと内心思っていたのです。
幸いなことに、入居一時金については入居後90日以内のクーリングオフで全額返還されることがわかり、母娘で安堵しました。
事例の問題点
今回は、娘主導で、早急に老人ホームへの入居を決めてしまったことに問題がありました。
厚生労働省の調査によれば「介護付き有料老人ホーム」の入居者の約半数以上が要介護3以上であり介護度が高いことがわかります。Aさんは要介護1で、介護サービスを利用しながら自宅で自立して生活できている状態でした。
基本的にAさんは社交家で、かかりつけの病院でも通院日にランチする友人たちもいるほどです。時間がAさんの喪失感を癒し、いずれ元どおりの暮らしに戻っていけることでしょう。
また、娘にもきちんと伝えました。「私はできる限りここで暮らしたいの、難しくなったときは、金融資産で賄えるホームで構わないからお願いするわね。マンションはあなたに遺したかったの、どうするかは任せるので顧問税理士さんに相談してみなさいね」
まもなく85歳になるAさんですが、ここからの平均余命は8.6年、なるべく長く自宅で暮らせることを願ってやみません。
三原 由紀
合同会社エミタメ
代表
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】