(※画像はイメージです/PIXTA)

総務省が10月18日に公表した「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の報告書において、NHKのインターネットでの番組配信を視聴する人に「相応の負担」を求める方針が示されました。報告書の案が事前に「パブリックコメント」にかけられ、ほぼ原案のまま確定されたものです。パブリックコメントとはどのような制度なのでしょうか。また、本件ではどのように機能したのでしょうか。解説します。

提出された「意見」はどのように扱われるか?弁護士に聞く

では、行政手続法のルールにおいて、意見を提出するのにはどのような資格が必要なのでしょうか、また、提出された意見は、どのように扱われるのでしょうか。行政手続に詳しい荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所 代表)に話を聞きました。

 

(荒川香遥弁護士)

「まず、意見の提出は誰でもできます。参政権のない外国人や子どもでも、自由に提出することができます。提出された意見には法的拘束力が一切ないからです。

 

ただし、だからといって、行政機関は、提出された意見を黙殺したり、ぞんざいに扱ったりしてはなりません。そのようなことがあれば、違法となります。

 

すなわち、行政機関は、提出された意見を十分に考慮しなければなりません(行政手続法42条)。また、提出意見の内容、それを考慮した結果とその理由を公示しなければなりません(同法43条)。

 

実際に、過去に、パブリックコメント手続を行った結果、行政機関が案を撤回した例もあります。

 

2022年に国税庁が、サラリーマンが副業をする場合に、収入が年300万円以下だと実質的に増税になるという内容の通達案をパブリックコメントにかけました。これに対して約7,000通もの反対意見が寄せられました。なかには、通達案が法律の条文や判例の趣旨に反していると指摘したものもありました。結果として、国税庁は反対意見を受け入れ、修正しました。

 

これは、パブリックコメントの制度において、意見をきちんと考慮しなければならない、どう考慮したのかを公示しなければならない、という規律があるからです。もちろん、今回も、提出された意見の内容と、それぞれの意見に対する回答が公示されています。」

 

提出された意見については、間違いなく読まれ、かつ、どのように考慮されたかが明示されるしくみになっているということです。したがって、その内容によっては、行政機関の方針やルール策定に影響を及ぼす可能性があるといえます。

どのような「意見」が寄せられたか

では、今回、インターネット配信業務(同時配信・見逃し配信)の「必須業務化」と、インターネットで「同時配信・見逃し配信」を視聴する人に費用負担を求めることについては、どのような意見が寄せられたのでしょうか。

 

公開されているパブリックコメントの結果報告書において、この点について寄せられた意見(番号123~130に記載されているもの。なお、同一の番号に複数の意見が記載されている場合は、別の意見として扱います)の内容を分類すると、概ね以下の通りです。

 

・A:必須業務化に賛成:2件

・B:必須業務化に反対ではないが一定の前提条件の充足を求める:4件

・C:必須業務化に反対:2件

・D:そもそもNHKの受信料制度自体に反対:1件

・E:その他:2件

 

明確な反対意見は「C:必須業務化に反対」が2件、「D:そもそもNHKの受信料制度自体に反対」が1件で、合計3件でした。

 

これらの意見について、それぞれ、「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」からの回答が示されています(同一の回答が妥当する場合はまとめて回答しています)。そして、結果として、NHKのインターネット業務の必須業務化と、インターネット視聴する場合の費用負担を設けることについては、原案がほぼ維持されることになりました。

 

このように、パブリックコメントは、法的拘束力はないものの、提出された意見が考慮されることが制度的に保障されています。今回の件でも、結果として原案はほぼ維持されましたが、寄せられた意見については、反対意見も含めて考慮されたことがうかがわれます。今後も、パブリックコメントが行政の公正性・透明性を確保する手段として機能することが期待されます。

 

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