報告書が示した「方針」の内容
まず、前提として、今回策定された報告書の内容を確認しておきましょう。
今回の報告書の正式名称は「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第2次)」です。そのなかで、NHKのインターネットでの番組配信等に関する扱いの方針が示されているということです。
骨子をまとめると以下の通りです。
・NHKのインターネットを通じた情報やコンテンツの提供を「本来の業務(必須業務)」と位置付ける
・全国でNHKの放送番組の「同時配信・見逃し配信」をインターネットを通じて継続的・安定的に提供する体制を整える
・インターネットを通じて視聴する人に「相応の負担」を求める
これは、インターネットを利用できる環境にあるすべての人を対象とするものではありません。報告書には、「テレビなどの受信設備を持たないがインターネットを利用できる環境にある者から、インターネットを通じて NHK の放送番組を視聴したいとの求めがあれば」と記載されています。また、「同時配信・見逃し配信」を視聴する場合には利用者IDの取得が必要です。
このことからすると、現状、テレビとは異なり、インターネットを利用できる環境にある人すべてを対象することは想定されていないといえます。
つまり、「テレビを持たないがインターネットを通じてNHKの番組を積極的に視聴したいと希望する人」を対象として、テレビでいう受信料のような「相応の負担」を求めるものだということです。
報告書が「パブリックコメント」にかけられた意義
上記内容を含む報告書は8月29日に「案」が公表され、9月7日~28日の間、パブリックコメント(意見公募手続)にかけられました。そして、提出された意見をもとに内容が改めて吟味され、確定されました。
パブリックコメントは、国の行政機関が一定のルールや基準等を定める場合に、事前に、広く一般から意見を募るものです(行政手続法39条)。以下を定める場合については、パブリックコメント手続を行うことが義務付けられています。
・政令
・府省令
・処分の要件を定める告示
・審査基準
・処分基準
・行政指導指針
また、これらに該当しない場合でも、行政機関は任意でパブリックコメント手続を行うことができます。
今回の報告書に関するパブリックコメント手続は、行政手続法上義務付けられているものではなく、総務省が任意で行ったものです。ただし、任意とはいっても、パブリックコメントにかける以上、行政手続法のルールに従って行わなければならないのはいうまでもありません。