愛着障害という障害をご存じでしょうか。対人関係がうまくいかず、放置すれば社会に適応できなくなる可能性のある深刻な障害です。愛着障害の症状や特徴、原因について、精神科看護師のひまわりさんにお話をうかがいました。
子どもの「愛着障害」とは?「発達障害」との違いを専門家が解説 ※画像はイメージです/PIXTA

 

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そもそも愛着とは?愛着はどうやって形成されるの?

心理学的には、「相手を大事に思う気持ちに支えられた絆のこと」を愛着といいます。

 

愛着を形成するのに、何か特別なことや難しいことは必要ありません。たとえば赤ちゃんであれば、お母さんやお父さんの声掛けや、抱っこなどのスキンシップやタッチングなど、日々のコミュニケーションを通じて愛着は形成されていきます。

 

愛着障害とその原因

愛着障害とは、親などの養育者との絆が何らかの原因で形成されず、子どもの対人関係などに問題が生じている状態のことです。愛着障害が起きる原因は、おもに次のような虐待などの不適切な養育環境にあります。

 

①叩く、蹴るなど身体的虐待

②暴言などの心理的虐待

③性的虐待

④ネグレクト

⑤両親の不在や離婚による家庭環境の変化

 

親に虐待する意思がなくても、昼夜働く必要があるなどで、子どもと関わる時間が極端に少なくなってしまうと、愛着障害につながってしまう可能性があります。また、夫婦げんかも心理的虐待に含まれることがありますので、注意してください。

 

とくに生まれてから5歳くらいまでのあいだに不適切な環境にあると愛着障害になりやすいですが、5歳以降であっても、家庭環境の変化や虐待により愛着障害が出ることもあります。

 

愛着障害の分類

愛着障害には、「反応性愛着障害」と「脱抑制性型対人交流障害」の2つの分類があります。

 

①「反応性愛着障害」とは

素直に甘えたり頼ったりできなくなる障害です。この障害があると喜怒哀楽の感情が乏しく、無表情になりがちです。また、頼ったり頼られたりできないので、自己評価が低くなってしまいます。人との交流の仕方がわからず、何かしらの虐待が原因で人に対する恐怖心もあるので、ほかの子どもと交流したがらないのも特徴です。

 

②「脱抑制性型対人交流障害」とは

反応性愛着障害とは逆に、知らない人にも甘えてしまったり、初めての場所にも走って行ってしまったりなど、人や環境に対して警戒心がなくなってしまう障害です。重度のネグレクトが原因で、養育者に甘えたいのに甘えさせてもらえないため、他人に対して甘えるという行動に出てしまいます。ほかの子どもと交流することはできますが、距離感がわからず必要以上に近寄ってしまいます。その反面、人の言葉や行動をストレートに受け止めがちで、傷つきやすいという特徴があります。