ふとしたときに子どもの片目がおかしな方向を向いている、これって気のせい? それ、もしかしたら「斜視」かもしれません。「斜視は早く治療を始めなければ子どもの将来に影響することも」と警鐘を鳴らすのは、眼科医のドクターK先生。放っておくと実は怖い、斜視について詳しく解説していただきました。
子どもの「斜視」…病気?それとも遺伝?治療法について眼科医が解説 ※画像はイメージです/PIXTA

斜視とは

物を見ようとするときに片方の目の位置が正面からずれてしまっている状態を斜視といいます。私たちは両方の目で見たものを脳で一つの像にまとめて立体的に捉えています。これを両眼視機能といいますが、これができ上がるのが9歳頃といわれています。それより前に斜視になると片目でしか物を見なくなり、斜視の方の目を使わなくなってしまいます。それによって視力が出にくくなったり物が二重に見えたり立体的に見ることができないといった症状が現れます。

 

斜視は生まれつきのものもありますが、多くが両目でしっかりと物を見るようになってから現れます。斜視と診断されるのは1歳半から3歳頃が最も多いといわれています。

 

斜視の種類

斜視は目がずれる方向(位置の異常)と、それが現れる頻度によって分類することができます。

 

位置の異常による分類

・内斜視:片側の黒目が顔の内側を向く

・外斜視:片側の黒目が顔の外側を向く

・上斜視:片側の黒目が顔の上側を向く

・下斜視:片側の黒目が顔の下側を向く

 

頻度による分類

・恒常性斜視:片側の黒目が常に正常な位置からずれた状態

・間欠性斜視:例えば疲れたときなど、何らかの条件が揃うと一時的に黒目の位置がずれる

 

斜視の中でも最も多いといわれているのが、ときどき片目が外を向いてしまう「間欠性外斜視」です。私たちが寄り目にするときは筋肉の力で眼球を動かします。そして一度内側へ寄った目は、力を抜くだけで正常な位置に戻ります。つまり人間の目は構造上、外側へ向くのが自然な状態だと考えられます。間欠性外斜視が最も多い理由は明確にはわかっていませんが、この目の構造が関係しているのではないかと考えられます。

 

子どもの斜視の原因や遺伝との関係は?

斜視になる原因で最も多いといわれているのが遠視です。その他にも脳の病気や神経の異常などが原因で斜視になることもあります。遺伝に関しては、両親が遠視の場合はその子どもも遠視になることが多いので、そういう意味においては遺伝も関係するといえます。ただし遠視になったからといって必ずしも斜視になるとは限りません。親御さんが斜視と診断されている場合は、そうではない人に比べたらお子さんも斜視になる可能性が高いので、念のため眼科での診察をおすすめします。

 

子どもの斜視は自然に治るもの?

基本的には斜視は自然に治ることはありません。放っておくことで斜視が悪化することもありますし、視力が落ちていったり両眼で見る機能が改善しにくくなります。子どもの目はだいたい8、9歳頃までが視覚感受性期とされ、物を立体的に見る力などが発達して視力が全体的に完成していきます。このくらいの年齢を過ぎるといくら治療をしても視力が回復しづらいので、治療の開始は早ければ早いほど良いと思います。

 

ただし間欠性外斜視に関しては、日常生活で目のトラブルがなければ経過観察する場合もありますが、症状によっては特殊なメガネや手術を行うことがあります。