日銀のマイナス金利解除という大きなトピックスに天井の見えないインフレ。難しい局面が続く中で今後、不動産投資をどのように進めていくべきか迷っている投資家は多いだろう。「持って良し、売って良し」をコンセプトに100棟以上の高収益賃貸住宅を施工した実績を持つ株式会社めぐるの青木瑛里氏は、そのような社会背景において、「今こそ王道の不動産投資に帰るべき」だと説く。その真意を聞いた。

「サラリーマン不動産投資家の終わり」の始まり

2024年3月、日本銀行は2016年から続いてきた「マイナス金利政策」を解除し、金利を引き上げた。日銀による利上げはおよそ17年ぶりだが、日銀当座預金に適用される金利は0.1%であり、「国内のインフレ率から考えると未だ超低金利の状態が続いている」というのが青木氏の見解だ。

 

「現在は、インフレ率と金利の差がデフレの時代よりも大きくなってしまっていますが、国債残高をはじめとする諸々の財務的な要因や、住宅ローン金利の上昇に伴う経済への影響の大きさ、円安による消費者物価高騰に伴う内需の減少など、現在の日本は金利を今すぐに大きく上げられるような状況にはなく、今後もしばらくは現在のような状況が継続するのが既定路線だといえます。この前提に立てば、これからの時代は余剰資金をマネーとして保有していると、その価値はどんどん毀損することになります。マネー以外の形に資産を変えないと資産防衛はできません」

 

一方で、現在の経済状況は過渡期であり、先行きの不透明さからリスク資産である不動産への投資は様子見を推奨する専門家も少なくない。確かに、これまで長く続いてきたデフレの時代には、安定したインカムを稼ぎ続けられる点で、高所得サラリーマンが安定した利回りを見込める不動産投資を始めることにはシナジーがあった。

 

しかし、物件価格の高騰と金利上昇により、まともにインカムを得られる物件はマーケットから失われつつある。さらに5年ほど前に起きたスルガ銀行の不正融資事件や近年に相次ぐ建築業者の破綻などから、特に新築案件の不動産に対するサラリーマンへの投資性資金の融資にはどこの銀行も及び腰であり、融資を受けるのも厳しい。

 

「キャッシュに恵まれた高所得サラリーマンが、さらなるキャッシュを得るためにサラリーマン不動産投資家となることは、失われた30年と呼ばれるデフレ時代だからこそ成り立っていた手法です。これからはインフレとともに価値が上がっていく資産を持たないと生き残れません。今が、その切り替わりの最後のタイミングであり、最終列車に乗り遅れないようにしないといけないのです」と青木氏は警告する。

不透明な時代こそ「王道の不動産投資に立ち返る」

まさに潮目といえる状況下、「サラリーマン不動産投資家が行っていたような“キャッシュ・イズ・キング”の不動産投資ではなく、王道の不動産投資に立ち返ることが資産防衛になる」と青木氏。では、「王道の不動産投資」とは、どのようなものなのだろうか。

 

「不動産の資産性を味方にして資産を守るのが、『王道の不動産投資』です」

 

バブル以前、好立地の不動産を保有する地主は、土地を担保に融資も受けながら賃貸住宅を経営していた。その土地の価値はインフレに伴い上昇。その上昇分を担保にさらに融資を受け、資産価値上昇が見込める土地を購入、賃貸住宅を建てて経営する。そうやって資産を拡大し、資産を守ってきた。このように時間を味方につけ、資産性を重視する不動産投資こそが本来の姿であり、王道なのだ。

 

では、これから資産価値が上がる不動産とは、どのようなものだろうか?

 

「好立地のファミリー物件であるのが重要です」

 

その大きな理由に、好立地のファミリー物件は希少で家賃が上昇していることがある。不動産ポータルサイトの空き物件を検索してみても、単身者向けが約85%。つまりファミリー向けは15%ほどしかない。ファミリー物件においては、明らかに供給が需要に追い付いてない状況だ。

 

また比較論として単身者向け物件は、入居者の回転率が速く、退去のたびに原状回復費用と入居者付のための広告費用がかさむ。短期的には高利回りに見えても、長期的にみればそれほど高い利回りは期待できない。さらに単身者向け物件は供給が多いだけに、新築が有利。新築期間が過ぎれば、家賃は大きく下がりやすく、利回りは大きく低下する。投資家にとってはリスクでしかない。

 

「新規のファミリー物件がなかなか出てこない中で、希少性の高い好立地でのファミリー物件を用意できれば、高収益に加え、資産価値の向上も期待できるのです」

 

そこで疑問となるのが、どのようにして「希少性の高い好立地でのファミリー物件」を用意するのかである。その虎の巻については、後編で詳しく語ってもらおう。