輸入インフレに拍車をかける「長期的な円安」から資産を守る…“ホームバイアス”を避け、「外貨」に投資するときの〈3つのポイント〉【エコノミストが解説】

輸入インフレに拍車をかける「長期的な円安」から資産を守る…“ホームバイアス”を避け、「外貨」に投資するときの〈3つのポイント〉【エコノミストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

22年以降、円安局面を迎えた日本では「外貨投資」を行うことが有効な資産防衛策となり得ます。本記事では、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏の著書『インフレ課税と闘う!』(集英社)から一部を抜粋し、インフレへの対処として「外貨投資」が有効である理由や、外貨投資を検討する際、どんな種類の資産を選択すべきかについて解説します。

金融リテラシー向上に有効なのは「座学」よりも「実践」

では、より具体的に外貨投資をどう組めばよいのだろうか。どんな種類の資産を保有するのがよいのだろうか。考え方は三つある。

 

1.流動性の高い外貨であるドルに投資する。
 

2.インカムゲイン(利子・配当による収入)を求める投資。為替変動リスクが相対的に小さい先進国通貨で投資して、高い債券利回りを追求する。
 

3.成長する国の株式に投資して、そのキャピタルゲイン(資本利得)を得る。インフレと通貨変動も激しいので、複数の国に分散する。

 

2022年3月から米国のFRBは、インフレ退治の利上げを開始した。政策金利(FFレート、短期金利)を約1年間で0%→5%台まで上げようとしている。流動性の高いドルが仮に5%のレートで増えるのならば、ドル預金でも十分だという考え方ができる。

 

ドルは、基軸通貨であり、流動性が最も高い。手数料は安く、他通貨に換金しやすい。ドル金利が上昇しているならば、敢えて別の通貨で持つ必要もないと思える。効率的運用の分散投資はしないでおく方法だ。

 

流動性の高い投資対象のことをキャッシュと呼ぶ。現金だけではなく、預金やMMF(マネー・マネジメント・ファンド)も広い意味で「キャッシュ」である。今後、FRBが利下げに転じるまで、ドルをキャッシュで持っていてもよい。

 

外貨投資のうち、ドルだけに集中して投資することは、わかりやすいという利点がある。外貨投資に慣れるときも、まずドル投資から始めることを勧める。ドル円の値動きは、毎日のニュースでも頻繁に報じられているからだ。

 

そして僅かでも自分の財産がドルになっていることで飛躍的に関心が高まるからだ。日銀のマーケット関連の部署では、年齢が若くして配属された職員に、少額でもよいからドル投資を勧めるという話を昔聞いたことがある。

 

仕事で必要な為替に関する知識を身につけるためには、自分自身のお金を投資をした方が、より真剣にドルやユーロについて知りたいと感じるからだろう。

 

金融リテラシーを高めるには、座学だけではなく、まず自分の財産で実践してみると、知識習得が早い。逆に、知識を身につけずに、大金をリスクのある投資対象に振り向けるのは危険だ。

 

証券投資の世界で言われるのは、「いきなり金持ちになった人の投資は損しやすい」という言葉だ。少額からドル投資を始めて、数年間ほどは経験値を高めることに徹するという方がよいかもしれない。

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インフレ課税と闘う!

インフレ課税と闘う!

熊野 英生

集英社

コロナ禍やウクライナ戦争を経て、世界経済の循環は滞り、エネルギー価格などが高騰した結果、世界中でインフレが日常化している。これからは、「物価は上昇するもの」というインフレ前提で、家計をやりくりし、財産も守ってい…

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