“未だに”「設備投資」を重視する日本企業…SONYの「会社設立の目的」に見る、日本企業が〈急務で取り組むべきこと〉

“未だに”「設備投資」を重視する日本企業…SONYの「会社設立の目的」に見る、日本企業が〈急務で取り組むべきこと〉
(※写真はイメージです/PIXTA)

企業は、お金の使い方で「稼ぎ」が決まります。お金の使い道には、大きく分けて「原材料や商品の仕入れ」、「業務を回すための費用」、「未来のための投資」の3種類があります。この中で、特に慎重な判断を要するのが「未来のための投資」です。戦略費とも呼ばれ、企業のビジョンが色濃く反映されます。戦略費の使い方を見れば、その企業の将来性が測れると言っても過言ではありません。本記事では、自身も社員数50名の新聞販売店を23年間経営した経験を持ち、多くの企業の経営支援に携わる米澤晋也氏が、時代の変化と企業の戦略転換の実務について事例を交え解説していきます。

 

SONYの「会社設立の目的」

創造性豊かな組織風土をつくる上で参考になるのが、SONYの設立趣意書です。趣意書の1ページ目には「会社設立の目的」として8項目が並びます。

 

その先頭に記されているのが次の文言です。

 

「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」

 

一般的には、設立の目的には「世のため人のため」といった趣旨が書かれることが多いのですが、SONYは自分たちが仕事を存分に愉しむことを優先しているのです。同社が、世界に冠たる創造性豊かな企業に成長した要因であると私は考えています。

 

では、どうすれば仕事は愉しくなるのでしょうか? 私は、20年以上に渡る経営実践と研究の中で、下記の要件を満たす環境が必要だということを突き止めました。

 

・適度な難易度のプロジェクト設定……頑張れば達成できそうな難易度であること。

 

・自律性……自分の意志で決め、行動できること。

 

・素早いフィードバック……自分で決め、行動したことによるフィードバックを早く得られること。

 

・上記3つを効果的に行えるチームワークがあること。

 

「適度な難易度のプロジェクトを自分たちで決め」→「自分たちで知恵を出し計画し」→「役割分担を決め行動し」→「フィードバックを受け取り、自分たちで検証し、次の行動を決める」……この一連を、自分たちが主導すると仕事が愉しくなります。

 

従来のトップダウン型の組織とは形態も活動様式も大きく違うので、イメージがしづらいと思います。そこで、私の経営支援先企業の事例を紹介します。

 

その会社では、社員の創意で「顧客満足度『倍増』プロジェクト」を立ち上げました。以前は、プロジェクトは上司が設定していたのですが、それだと自分事にならないという理由から、上司は大まかな方向性を示すだけで、具体的なプロジェクトは自分たちで決めてもらうようにしました。

 

プロジェクトでの実行アイデアは、みんなで付箋に書いて出し合いました。出たアイデアを整理、取捨選択し、5つの取組みに絞り込みました。1つの取組みに対し、担当者が2人~4人つきますが、担当決めも自分たちで行います。定期的に進捗確認のミーティングを行い、困っているメンバーがいたら、仲間が全力で支援します。

 

フィードバックは、顧客アンケートを収集することで得ます。顧客から寄せられた満足の声の数と内容を吟味し、活動を自己評価し、次の作戦に活かします。プロジェクトはまだ進行中ですが、社員さんは、時間が経つのを忘れるほどに日々の仕事に没頭しているそうです。

 

仕事の報酬は仕事そのもの……まさにSONYが目指した世界です。きっと、次に同社から受ける報告は、プロジェクト成功の朗報だと思います。

 

時代は工業社会から感性社会へ確実に移り変わっています。企業は、感性価値を創造できる人材の確保・教育と同時に、そのような人材が活躍できる「舞台」、自律的で闊達な組織風土をつくることに投資することが急務であると私は考えています。

 

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