(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

●欧米5ヵ国はイスラエル支持を表明、ブリンケン米国務長官は衝突拡大防止のために中東を訪問。

●イランは介入をイスラエルに警告、アラブ諸国の多くはパレスチナ寄りだが、エジプトは仲介役に意欲。

●紛争拡大なら市場は大きく混乱、この先は米国、サウジアラビア、エジプト、トルコの動向に要注目。

欧米5ヵ国はイスラエル支持を表明、ブリンケン米国務長官は衝突拡大防止のために中東を訪問

今回のイスラエルとハマスの衝突については、パレスチナ問題の歴史を踏まえ、10月10日付レポートで、その背景を解説しました。そして、金融市場への影響を考える場合、米国や中東周辺国を巻き込む形で、紛争が広がるか否かが焦点になることも説明しました。その後、イスラエルとハマスを巡り、関係諸国に様々な動きがみられるようになったため、以下、主なものをまとめておきます(図表)。

 

【図表】イスラエルとハマスを巡る主な関係諸国の動き

 

米国や英国など、欧米5ヵ国の首脳は10月9日、共同声明でイスラエルへの結束した支持を表明しました。こうしたなか、ブリンケン米国務長官は、イスラエルとハマスの衝突拡大を防ぎ、ハマスに捕らえられた人質の解放に向け、各国が影響力を行使するよう働きかけるとし、10月12日にイスラエルを訪問、その後、サウジアラビアなど中東5ヵ国を訪れました。また、バイデン米大統領も、18日にイスラエルを訪問することとなりました。

イランは介入をイスラエルに警告、アラブ諸国の多くはパレスチナ寄りだが、エジプトは仲介役に意欲

一方、イランのアブドラヒアン外相は10月14日、ハマスの指導者ハニヤ氏と会談し、ハマスへの協力を続けることを伝えました。そして、イスラエルに対し、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの攻撃を続ければ、イランが介入する可能性があると警告しました。また、親イラン民兵組織ヒズボラは、10月7日にイスラエルとハマスが衝突して以降、イスラエル北隣のレバノンから、イスラエルに向けた砲撃を続けています。

 

アラブ諸国の多くは、同胞のアラブ系パレスチナ人に同情的とみられ、報道によれば、サウジアラビアはイスラエルとの国交正常化交渉を凍結しているとのことです。なお、イスラエルとハマス双方にパイプを持つエジプトは停戦の仲介を試みており、トルコも仲介役に意欲を示しています。このほかロシアや中国も、米欧とは距離を置き、独自に中東諸国と会談を行っています。

紛争拡大なら市場は大きく混乱、この先は米国、サウジアラビア、エジプト、トルコの動向に要注目

イスラエルとハマスの衝突は、パレスチナ問題に起因しており、根本的な解決は容易ではありません。ただ、今のところ紛争が広がりをみせるには至っておらず、金融市場への影響は限定されています。仮に、イスラエルがガザへの地上侵攻に踏み切った場合、イランや米国の動きに市場の注目が集まり、事態悪化なら原油価格の上昇、株価の下落、債券価格の上昇(利回りは低下)、対主要通貨での米ドル、日本円、スイスフランの増価が見込まれます。

 

イスラエルの地上侵攻後、比較的短期間で停戦合意となれば、市場参加者のリスクオフ(回避)の姿勢は弱まり、前述の原油、株、債券、為替の動きは反転するとみています。今回のイスラエルとハマスの衝突について、先行きの見通しにくい状況は続くと思われますが、特に米国やサウジアラビア、さらに仲介役となり得るエジプトやトルコの動向に、注目しておく必要があると考えます。

 

 

(2023年10月17日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【中東情勢アップデート】紛争拡大なら金融市場は大きく混乱…この先、要注目の“4ヵ国”(三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジストが解説)』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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