放置すれば「年間20万円以上」のコストが発生することも…空き家になった実家を“負動産”にしないための〈あと片付け〉のポイント【空き家問題のプロが解説】

放置すれば「年間20万円以上」のコストが発生することも…空き家になった実家を“負動産”にしないための〈あと片付け〉のポイント【空き家問題のプロが解説】

今回の相談者・岡田次郎さん(仮名)の実家は、父が亡くなり、母が施設に入居した後、「空き家」になっています。実家を「空き家」のままにしておくことには、どんなデメリットがあるのでしょうか。本稿では、株式会社JKASの「空地空家で困ったときのあなたの街の相談窓口」代表を務める森下政人氏が、「空き家」にかかるコストについて解説します。

空き家の維持管理には年間20万円以上のコストがかかることも

空き家の管理には、庭の剪定や水道光熱費、火災保険のほか、管理のために現地を訪れる際の移動費用などのコストがかかります。そうした維持管理費用はトータルで年間20万円以上になる場合もあり、使わない実家は早めに売却してしまうべきといえます。

 

実家が空き家になったときの片付けや段取りですが、親が実家に戻る可能性がある場合、片付けをするにしても、親が宿泊するだけの最低限度の荷物を残しておかなければなりません。

 

一方で、親が戻る予定がなく実家の売却を検討する場合は、そのための作業を適宜、業者に依頼したほうがよいでしょう。必要なものだけは自分で持ち出し、それ以外の荷物や家財道具などはすべては業者に処分してもらったほうが、作業はスムーズに進みます。

 

また、新聞やサプリメント、インターネット、PC内に入っている有料アプリ、クレジットカードなど、親が契約していた定期購入などの停止も忘れてはいけません。ここで問題となってくるのがパスワードなどの情報。通帳類の在りかや、どんなサービスの契約をしているか等は、親が元気なうちに一覧表を作成しておく必要があるでしょう。

空き家の維持・管理で重要な「ご近所付き合い」

家を維持管理している間は、近隣住民との関係が非常に重要です。

 

ポストのなかのチラシやゴミ、緊急に水道管が破裂したときの対応など、やはりご近所でないと対応できないことが多々あります。

 

小さいときに可愛がってもらっていたご近所さんがいればいいですが、「ご近所付き合いはない」という人もいるかもしれません。しかし、空き家の維持管理を行っていく上で、ご近所さんの存在はとても重要ですので、管理のために現地を訪れた際は周りの住民に積極的に挨拶をするようにしましょう。

 

空き家は維持管理が欠かせません。人が住まなくなると、家は急に老朽化が進みます。


梅雨や夏の時期は、湿気が充満してカビが発生したり、排水口のトラップの封水がなくなって、下水の臭いや虫が排水溝から侵入したりします。天井部にシミがないか、雨漏りがないかなどのチェックも欠かせません。夏場は、1ヵ月も締め切ったままにすると、タンスのなかや畳がカビだらけになることはよくあるため、とくに注意が必要です。

 

また、伸び放題になった雑草や植木が道路や隣地にまで越境してしまうと、近隣からのクレームの原因になるため、とくに気を付けなければなりません。明らかに空き家ということがわかれば、ゴミを放置される、知らない間に誰かに住まれる、空き巣の被害に遭う……という事態も起こり得ます。

 

空き家をキレイに維持するためには、一定期間、子供が住むというのが有効な選択肢です。住んでいることで実家をキレイに保てますし、何よりも住居費を浮かせられることは大きなメリットです。

 

実家が遠方にあり、どうしても毎月ペースでメンテナンスを行えない場合は、空き家管理サービス等の業者を使い、室内の管理を定期的に行ってもらうことも積極的に検討しましょう。

不動産が“負動産”になってしまう前に…

これまでの制度では、空き家状態になっていても「住宅」として固定資産税が減額されるため、放置されるケースが多かったですが、今後は「管理不全空き家」に指定され、改善されない場合は固定資産税、都市計画税の減額の措置を解除されてしまいます。

 

居住目的のない空き家はこの20年で1.9倍、今後も増加して2030年には470万戸になると分析されています。空き家は時間が経つほど、売れにくく、問題も複雑になります。

 

実家が空き家になったら長期間そのままにせず、売却・賃貸できる段階で動き出すことが重要です。不動産が“負動産”になり、身動きができなくなってしまう前に、思い切って手放す勇気が求められます。

 

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