(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦の財布は1つにするべきなのでしょうか? 長年連れ添った2人でもお金の管理を共有していなければ思わぬ事態にもなり得ると、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏はいいます。本記事では、Aさん夫婦の事例とともに、夫婦のお金の管理について解説します。

妻の隠しごとに夫、唖然

相談の際、2人の年金額、貯蓄額、日常生活の支出、今後のライフイベント等をFPに伝えたところで、妻が口を開きました。

 

「夫は仕事一筋できたので、家計のやりくりはまったくできません。子どもと孫から援助をお願いされ、ついついやり過ぎたようです。ですが、夫の功労の退職金なので、ある程度、やりたいようにさせていました。ですが、最近の貯金の減り具合には夫もさすがにまずいと思ったようですね(苦笑)」

 

妻は社会保険に加入する仕事をしたことがありません。ですが、子育てが一段落したころ、少し内職をしていました。

 

当時の生活は、Aさんの給与でやりくりし、妻自身の収入と切り詰めた生活費の残りを積立て投資していました。妻は夫が計画的にお金を使えないこと、子どもに甘いことから、Aさんには内緒で、へそくりをしていました。

 

妻は35歳のころ、友人の保険外交員から「これからの時代はお金にも働いてもらわないと、老後は安泰といえないかもしれない」と、投資セミナーに参加したのをきっかけにへそくりを始めたところ、毎月3万円を30年で平均利回り5%により、なんといまでは約2,500万円になっていました(金融庁の資産運用シミュレーションより)。

 

妻からの爆弾発言に、「それを早く教えてくれれば……」と絶句するA夫さん。ともあれ、しっかり者の妻のおかげで老後不安は回避できたようですが、妻も知らなかった問題をFPから指摘されます。

 

夫から生活費をもらい、使い切れなかった分を妻名義の預金に貯め込んでいるような場合、夫の財産として相続税の対象になることがあります。今回、妻のへそくりは、妻自身が内職で稼いだ分は妻の財産ですが、夫の生活費の残りは名義預金となり、名義預金は相続税の対象となることをご存じでしょうか。

 

税務調査による指摘を回避するには?

実は、2023(令和3)年度、税務調査で指摘される申告漏れ財産は、現金・預貯金などが32.2%と最多です(申告漏れ相続財産の⾦額の構成⽐の推移より)。

 

税務調査でのちのち指摘されないためにも、夫の生活費からお小遣いとして、毎月決まった額を贈与として夫から受け取ります。贈与税は、年間110万円までなら非課税となります(1人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額)。妻の口座に入金するなら振込記録を残しておきましょう。

お金の管理は夫婦間でしっかり共有を

Aさん夫婦はおしどり夫婦です。今回、へそくりが発覚し、驚いたもののAさんは怒ることもなく、むしろ妻が自分の性分をわかっての行動だったので、感謝していると言います。

 

しかし、FPに相談することなく過ごしていた場合、いざ相続となったら妻はどうしていたでしょうか。日ごろからコミュニケーションがとれている「おしどり夫婦」であっても、しっかりとお金の管理について共有できていなければ思わぬ事態を招くことにもなりかねません。第三者からのアドバイスも重要でしょう。もし意思疎通がない夫婦の場合には、離婚に発展する恐れすらあるので、より注意が必要です。

 

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表

 

 

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