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インド<金融市場動向>
⇒株式は底堅い動き、金利はもみ合い、ルピー下落リスクに留意。
【株式市場】
◆CPI伸び率減速を好感
インド株式市場は、8月のCPIの前年比伸び率が減速したことや、7月の鉱工業生産指数が事前の市場予想を上回ったことなどから堅調に推移。個別銘柄では、中東からの大型受注を獲得したと報じられたエンジニアリング大手企業の株価上昇が目立った。引き続き、インドはグローバル経済の減速が予想されるなか、安定的な経済成長が期待できることや、地政学リスクが限定的であることなどから相対的に底堅い値動きになると想定。
【債券(国債)市場】
◆債券利回りはもみ合い
これまで実施された利上げによる今後のインフレ見通しや景気実態に対する効果や影響を見極める動きが続く。財政政策にもサポートされ堅調な景気状況が継続し利下げへの転換には時間がかかるなかで、インド国債利回りはもみ合いの展開を想定する。
【為替市場】
◆ルピー下落リスクに留意
目先、米国の金融引き締め観測で米ドルが堅調に推移しやすい環境を想定すれば、短期的にはルピーの下落リスクに留意したい。一方、日銀は当面追加的な金融引き締めを行わないという見方は円安を支持するが、財務省による円買い介入警戒から、対円でもルピー安リスクに留意したい。
インド<マクロ経済動向・政策>
⇒景気は持ち直し。
◆生産は持ち直し
7月の鉱工業生産は前年同月比+5.7%と市場予想を上回り、6月の同+3.8%から加速した。下記にあるように、非常に高い資本支出予算額の伸びを基に投資の代理変数である資本財生産が上振れた後、全体的に生産が持ち直している。財輸出が下振れている状況で鉱工業生産が持ち直しているため、内需主導で生産が持ち直し局面にある。10-12月期にはベース効果で財輸出の前年同月比はプラスに転じるとみられ、生産にポジティブに貢献するだろう。
◆インフレ率はすでに沈静化
8月の消費者物価上昇率は前年同月比+6.8%と、引き続きターゲットレンジを超えたものの、7月の同+7.4%から鈍化した。急騰していたトマト価格は8月中旬に急低下しており、すでに消費者物価上昇率はターゲット内へ落ち着く方向性が見えている。また、玉ねぎなど他の野菜価格が総じて落ち着いているため、家計の期待インフレ率の上振れリスクは限定的となり、金融政策スタンスは変わらないだろう。
◆拡張型の財政政策
政府は2023/24年度の予算案において資本支出(公共投資)の伸び率を+37.4%と、前年度の+22.8%から加速する形で設定した。拡張型の財政政策が機能することで、2023/24年度には資本財生産・投資は上振れすると判断する。一方、2023/24年度の補助金予算は歳出全体の8.3%を占めており、昨年度の着地予想に対して28.2%の減少となっている。2024年前半に総選挙が行われる可能性が高いことを考慮すると、貧困層の有権者からの支持を固めるために、補助金支出が財政赤字の拡大をもたらす可能性がある。
ベトナム ←ピックアップマーケット
⇒株価は持ち直し、ドン安リスクに留意。
【株式市場】
◆中央銀行が流動性を吸収
ベトナムドンが米ドルに対して軟調に推移したことや、ベトナム国家銀行(中央銀行)が金融市場から流動性を吸収したことなどが嫌気された。市場では、バイデン米大統領のベトナム訪問に合わせ、ベトナムと米国が両国の関係を包括的戦略パートナーシップに格上げしたことや、訪米したファム・ミン・チン首相が米半導体企業のエヌビディアに対しベトナムへの投資を呼びかけたことなどが注目を集めた。海外投資家は6カ月連続で売り越し。バリュエーションは割安であり、不動産市場における流動性が改善すれば回復が期待できる。投資戦略としては、海外企業によるベトナム進出の恩恵が期待できる銘柄、若い人口構成と所得増加の後押しがある消費関連銘柄、ツーリズム関連銘柄などを長期目線で有望視できそうだ。
【為替動向】
◆ドン安リスクに留意
短期的には米国の金融引き締め観測を受けて米ドル下落は考えにくく、ドン安リスクに留意すべきだろう。一方、8月の消費者物価上昇率は前年同月比+3.0%と低位にあり、米ドル高の割にはドン下落ペースは緩やかだ。日銀による追加引き締め観測後退は円安を支持するが、財務省による円買い介入警戒から対円でもドン安リスクに留意したい。
【マクロ経済動向】
◆景気は底入れ
9月の主要経済指標は総じて持ち直しとなった。財輸出のGDP比が大きいベトナムではベース効果で10-12月期の財輸出の前年同月比は9月に引き続きプラスで推移するとみられ、鉱工業生産をけん引する形で景気持ち直しを更に確実なものにするだろう。7-9月の実質GDP成長率は前年同期比+5.3%と、4-6月の同+4.1%から加速しており、10-12月には成長率は更に加速するだろう。
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド株式は堅調推移…今後の値動きは?「9月のアジアマーケット動向」を振り返る【三井住友DSアセットマネジメントが解説】』を参照)。