(※写真はイメージです/PIXTA)

年金も預貯金も十分で、夫婦ともに健康な70代。一見なんの心配もなさそうですが、「老後破産リスク」は思わぬところに潜んでいるものです。今回、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが実際に体験した事例を交えて解説します。

本気で言ってる…?ワガママ息子の「無謀すぎる」おねだり

息子の願いは

 

  • 住宅購入のため1,000万円援助をしてほしい
  • 購入する家の近くの老人ホームに入所してほしい

 

というものでした。

 

1,000万円の使いみちは、夫婦が了解するかは別として理解できます。

 

しかしなぜ、A夫妻は老人ホームに入居するのか。一緒に暮らさないかと言ったのはそっちでは……? その理由について息子は、

 

「購入する家は3世代で住むには狭い。でも、住宅購入価格を上げては住宅ローンの返済ができない。しかも、万が一父さんと母さんの介護が必要になっても、夫婦とも住宅ローン返済のために働くので実家まで行く余裕はないよ。だから、購入する家の近くの老人ホームに入所して欲しいんだ」

 

と、あくまでも自分たちの都合が最優先です。

 

加えて息子は、不動産会社の担当者が「実家の地域は過疎化が進み地価は下降傾向にある」と話していたとも言いました。

 

夫婦は、息子が住宅を購入するときはいくらか援助はするつもりでしたが、いきなり金額まで指定されては……。ましてや、同居ではなく老人ホームに入所!

 

Aさんは思わず「お前、本気で言っているのか?」聞きましたが、息子の目は真剣そのもの。

 

Aさんは「援助も入所もする道理がない」と即答しました。

 

すると、息子は「15日後の再来週の日曜日に、不動産会社と売買契約を結び、銀行にも住宅ローンの本審査を申込むんだ。なにより、嫁や子どもは新しい家に住むことを喜んでいるんだから、もう引き返せないよ」と半ば脅迫する始末です。

 

その後、夫婦は息子に予約していたホテルまで送ってもらい、孫への土産を息子に託しました。

 

夫婦は、我が子のワガママに呆れかえったものの、何とかしなくてはと思い、旧知の筆者にホテルから電話をしてきたのです。

2種類ある有料老人ホーム

筆者は、Aさんからの電話で概要を聞き、後日事務所にお越しいただくことにしました。

 

なお、現在自立しているA夫妻は「住居型」の有料老人ホームには入所できますが、要介護や要支援の認定を受けた方が入所する「介護付き」の施設には入所できません。筆者がAさんとの電話中にネットで検索したところ、息子が話していた施設は「介護付き」でした。

 

筆者は、息子から直接聞きたいこともあり、息子からも連絡してもらうことにしました。

 

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次ページワガママ息子の「言い分」

※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

〈参照〉
生命保険文化センター『「相続時精算課税制度」とはどんな制度?』(https://www.jili.or.jp/lifeplan/houseeconomy/828.html)

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