本記事のポイント
・TOPIXは右肩上がりで上昇相場が継続
・経済指標はデフレの終焉を示す
・東証のPBR改革、インフレ、新NISA、好材料が並ぶ
TOPIXは右肩上がりで上昇相場が継続
TOPIXが年初来高値、すなわち33年ぶり高値を更新した。年初から、ほぼ一本調子で右肩上りの上昇相場が続いている。ドル円相場も147円台だ。円安・株高の流れはなにも変わっていない。
中国の景気不安だとか、インフレがなかなか収まらないとか、「ノイズ」は多い。しかし、シンプルに相場を眺めれば、これまで一貫して述べてきた株高シナリオはまったく崩れていない。
経済指標はデフレの終焉を示す
日本株相場は、まさに「巡り合わせ」とでも言うほかはないほどの好環境に恵まれている。第一に、未曽有の災禍であったコロナが終わった。
これほど喜ばしいことはめったにない。そして、このタイミングでデフレ脱却が完全なものになろうとしている。4〜6月期の需給ギャップはプラス0.4%と、2019年7〜9月期以来、15四半期ぶりにプラスに転じ、需要不足が解消した。これで脱デフレを示す4指標(残り3指標はCPI、GDPデフレータ、単位労働コスト)すべてプラスになった。デフレこそ、長年にわたって日本経済を蝕んできた諸悪の根源である。コロナの終焉にデフレの終焉が重なって、喜びもひとしおである。
この先、日本にもマイルドなインフレが定着するとなると、さまざまな面で経済や株価にポジティブな要素が増えてくる。たとえば、名目GDPが増える。企業の値上げも通りやすくなり、売り上げも利益も増える。シンプルに経済が拡大する。
足元では、植田総裁発言をきっかけに、日銀の金融政策の変更が取り沙汰されているが、極論すれば、日本で金利が上がると言ったって微々たるものだ。政策金利も長期金利も、インフレのもとでは「実質マイナス」の水準がしばらくは続くだろう。それが企業にも家計にも投資を促し、経済を好回転させる。
東証のPBR改革、インフレ、新NISA、好材料が並ぶ
折しも、東京証券取引所による「低PBR(株価純資産倍率)是正改革」が進行中だ。そこにアクティビストやそれ以外の投資家も絡んで、積極的なムーブメントが展開されている。
日本経済新聞の報道によれば、2023年4〜6月期決算を受けて2024年3月期の配当予想を上方修正した企業は43社と金融危機後で3番目に多く、全体の3割が前期比で増配を予定する。配当総額は15兆円と過去最高となる見通しだという。これは前述の東証のPBR改革に加えて、インフレも要因だろう。デフレ下では「キャッシュ・イズ・キング」だったが、インフレ下での現金保蔵は「死に金」でしかない。使い道がないなら株主還元に充て、資本効率の改善を図ったほうがいい。
株主に還元するばかりでなく、人への投資も有効な資金の使い方である。岸田政権の「新しい資本主義」はいまだによく見えないままだが、少なくとも「人的資本投資」がブームになっていることは確かなようだ。
ただ、「人的資本」云々という以前に、強烈な人手不足で賃上げをしなければ人手が確保できなくなっている。とにかく、企業がヒト・モノにカネを振り向けている。これらを総合的に勘案して、日本企業が今度こそ変わるという期待が醸成されている。
世界的に見ればインフレが落ち着いてきたのも吉報だ。日本企業の業績にとっては原材料高が一服し、コストが下がる。そこにこの円安である。昨年度は原材料高で円安効果が相殺されてしまったが、今年度こそは円安の恩恵を享受できるだろう。
そしてFRB(米連邦準備理事会)の利上げが停止されれば、世界の株式相場にとっての大きな好材料となる。来年からは新しいNISA制度(少額投資非課税制度)がスタートする。長い目でみれば莫大なマネーが流入してくるだろう。
これだけの好材料が並ぶことはそうそうあるものではない。くどいが、まさに「巡り合わせ」である。100年に一度の危機と謳われたリーマン・ショックから15年を迎えるこのタイミングで、こんなに素晴らしい環境について言及できる日が巡ってくるとは。
結論は、言わずもがな、日本株を買うしかないだろう。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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