「おひとりさま」が介護状態になったら…今から知っておきたい「介護保険制度」を利用するための手続き【介護ジャーナリストが解説】

「おひとりさま」が介護状態になったら…今から知っておきたい「介護保険制度」を利用するための手続き【介護ジャーナリストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化社会が進み、誰もが介護が必要になる可能性があります。10年にわたり祖母を在宅で介護した経験をもつ介護ジャーナリスト・小山朝子氏は、介護保険制度やその他の制度を利用すれば、ひとり暮らしでも最期まで自宅で過ごすことも可能だといいます。介護保険の基本的なしくみと利用のための手続きについて、小山氏の著書『ひとり暮らしでも大丈夫! 自分で自分の介護をする本』(河出書房新社)から一部抜粋して紹介します。

介護保険制度は「介護サービス」の現物支給を受けられる

2020年の国勢調査の結果によると、日本の総人口は1億2,614万人、65歳以上の高齢者は3,533万5,805人で、そのうち単身世帯は671万6,806世帯。高齢者の5人に1人がひとり暮らし、いわゆる「おひとりさま」となっています。

 

「単独世帯」は2115万1,000世帯(一般世帯の 38.1%)です。これは2015年と比べて14.8%増となっており、一般世帯に占める割合は 34.6%から 38.1%に上昇しています。ひとり暮らしで老後を迎える人は確実に増加することが見込まれます。

 

体が不自由になってもひとり暮らしを続けていきたい──。そう考える方も多いと思います。そこで、その望みをかなえるために、まず活用したいのが「介護保険制度」です(以下「介護保険」と略します)。

 

介護保険は、介護が必要な人を社会で支えるという目的で2000年にスタートしました。

 

被保険者は65歳以上の「第1号被保険者」と、40~64歳の「第2号被保険者」に分かれます。第1号被保険者は病気の種類を問わず介護保険の対象となりますが、第2号被保険者の場合、特定疾病(パーキンソン病など16種類の疾病)によって必要だと認められた人のみが対象です。

 

介護保険の運営主体は市区町村で、その財源は40歳以上の被保険者から徴収した保険料と税金です。保険料は被保険者が50%を負担し(第1号被保険者が23%、第2号被保険者が27%)、残りの50%が公費で賄われることになっています(国が25%、都道府県が12.5%、市区町村が12.5%。[図表1]参照)。

 

[図表1]介護給付費の財源構成

 

介護保険は現金が給付されるわけではありません。介護サービスという「現物」で支給されます。第1号被保険者の保険料は市区町村によって異なり、各自の所得に応じてその額が設定されています。第1号被保険者の介護保険料の納付方法は、年金から天引きする「特別徴収」と、口座振替または納付書で納める「普通徴収」があります。

介護保険のサービスを利用するため必要な手続き

介護保険のサービスを利用したいと思ったら、お近くの「地域包括支援センター」もしくは市区町村の介護保険課等の窓口へ行きます。このとき、65歳になったらお手元に届く「介護保険被保険者証」を提出します。

 

その際は、事前に電話で問い合わせてから窓口に出向くとスムーズです。もしも、介護保険被保険者証が紛失してしまった等の事情によって手元にない場合には、その旨も事前に伝えておくとよいでしょう。

 

窓口の担当者は申請を希望する人の状況をたずね、明らかに介護保険の対象外ではないか、「基本チェックリストによる判定」をおこなうか、「要介護・要支援認定の申請」を進めるかなどを案内します([図表2]参照)。

 

[図表2]介護保険の利用までの流れ

 

「基本チェックリスト」は生活や身体に関する25項目の質問から構成されています。判定後、「非該当」だった場合でも65歳以上の誰もが利用できる「一般介護予防事業」(健康教室など)のサービスが利用できます。

 

「生活機能の低下がみられた人」は「介護予防・生活支援サービス事業」(訪問型サービス・通所型サービス)の対象者となります。「訪問型サービス」ではヘルパーとともに調理などを行ったり、「通所型サービス」ではデイサービスで筋力トレーニングを受けたりします。

次ページ介護保険の「申請から利用」までの流れ
ひとり暮らしでも大丈夫! 自分で自分の介護をする本

ひとり暮らしでも大丈夫! 自分で自分の介護をする本

小山 朝子

河出書房新社

家族に面倒をかけたくない、施設に入らず最期まで自宅で過ごしたい…高齢になってもひとり暮らしを続けるために、公的サービスを上手に利用しながら在宅でケアを受ける知恵と方法を教える。

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