宿泊旅行統計調査2023年7月~日本人延べ宿泊者数が全体を押し上げ、延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を回復~

宿泊旅行統計調査2023年7月~日本人延べ宿泊者数が全体を押し上げ、延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を回復~
(写真はイメージです/PIXTA)

観光庁の宿泊旅行統計調査によると、23年7月の延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を上回りました。外国人の宿泊者数も5カ月連続でマイナス幅を縮小しており、引き続き回復が見込まれています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の安田拓斗氏が宿泊旅行統計調査の結果について解説します。

2. 日本人の旅行需要は回復基調

日本人延べ宿泊者数は全国旅行支援が開始された2022年10月以降、堅調に推移している。

 

全国旅行支援は2023年1月10日以降、割引率を40%から20%へ下げ、割引上限額を交通付宿泊旅行の場合は一泊5,000円、それ以外の場合は3,000円、クーポン券は平日2,000円、休日1,000円として運営されてきた。

 

また、5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ引き下げられたことで、使用条件(ワクチン3回接種証明書もしくは陰性証明書の提出)は撤廃されている。

 

現時点(8月31日)では、23県が9月以降も全国旅行支援を継続するが、この中で、茨城県、福井県、佐賀県、長崎県、沖縄県を除いた県では、全国旅行支援の対象が貸切バスを利用した団体旅行のみとなっており、個人旅行は対象となっていない。

 

 

47都道府県のうち半分以上が8月末までに全国旅行支援を終了しているうえに、同制度を継続している県の大部分では、貸切バスでの団体旅行のみが対象と対象範囲が狭まっている。また、今後は全国旅行支援を終了する県がさらに増加していく。

 

 

しかし、基調として日本人の旅行需要は回復しているため、全国旅行支援による後押しがなくなったとしても、日本人延べ宿泊者数はコロナ禍前と同程度の水準で推移を続けることが予想される。

3. 円安により外国人宿泊者数は回復

2022年10月11日に入国制限の緩和、個人旅行の解禁、短期滞在のビザ免除再開、一日あたりの入国者数の上限の撤廃など水際対策が緩和され、2023年4月29日に水際対策が撤廃されたことで、外国人延べ宿泊者数は回復してきた。

 

2023年7月には2019年比▲1.6%とほとんどコロナ禍前の水準を回復した。しかし、外国人観光客のおよそ3分の1を占めていた中国人観光客の回復が鈍い。この回復の遅れは中国政府が日本への団体旅行を禁止していたことが主因である。

 

2023年7月の中国人延べ宿泊者数(従業員数10人以上の施設)は2019年比▲56.3%(6月:同▲65.7%)と韓国(同24.7%)、香港(同▲2.6)、台湾(同4.6%)、アメリカ(同53.4%)、イギリス(同28.5%)など他の国・地域と比較すると回復が遅れている。

 

外国人延べ宿泊者数(従業者数10人以上の施設)の2019年比は2023年7月には全体が▲8.3%(6月:同▲11.6%)と5ヵ月連続でマイナス幅が縮小し、中国を除いた全体が同17.6%(6月:同12.4%)と3ヵ月連続でコロナ禍前を上回った。

 

外国人宿泊者数は中国を除くとコロナ禍前を大きく上回っている。中国がコロナ禍前の半分程度の水準にしか回復していないにもかかわらず、全体もコロナ禍前に近い水準まで回復している。足元の円安が追い風となり、今後も外国人宿泊者数は回復基調を継続するだろう。

 

ただし、8月10日には中国人の日本への団体旅行が解禁されたため、中国人観光客数の回復が予想されるが、処理水放出によって中国の反日感情が高まり、日本への旅行を取りやめる中国人が増加していることには注意が必要だ。

 

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年9月1日に公開したレポートを転載したものです。

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