年金の真実…自営業・会社員、結局「受け取れる年金額」はいくら?…計算方法を伝授【公認会計士が解説】

年金の真実…自営業・会社員、結局「受け取れる年金額」はいくら?…計算方法を伝授【公認会計士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

年金不安を抱える人は多いのですが、実際に自分の年金額を計算したことがあるという人は、あまり多くないようです。ここでは、日本の年金制度のしくみをおさらいしたうえで、年金額の計算方法を見ていきます。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

年金額は「働き方」でかなり異なる

生徒:最近は年金の話題が増えています。一部の世代の方々がもらいすぎているとか、将来は年金制度が破綻するのでは、など、いろいろな話がありますが、実際のところ、どのように理解すればいいのでしょうか?

 

先生:年金制度について、基本から順に追っていきましょう。「国民年金」と「厚生年金」の違いはおわかりですか?

 

生徒:はい。国民年金は自営業だった方がもらう年金、厚生年金は会社員や公務員だった人がもらう年金ですね。

 

[図表1]第1号被保険者・第2号被保険者・第3号被保険者と公的年金

 

先生:そうですね。正確には、国民年金は自営業だけでなく、20歳以上60歳未満のすべての人が加入して、将来すべての人がもらえる年金です。自営業者は厚生年金に加入することができないので、国民年金だけをもらうことになります。自営業者は「第1号被保険者」、会社員・公務員は「第2号被保険者」、会社員・公務員の配偶者に扶養される年収130万円未満の夫または妻は「第3号被保険者」になります。

年金をもらえる条件、10年以上の「資格期間」が必要!?

生徒:60歳まで保険料を支払い続けるのですね? 払い終わったら、年金はいくらもらえるのでしょうか?

 

先生:国民年金は「老齢基礎年金」と呼ばれていて、20歳から60歳になるまでの加入期間に応じて計算された年金額を受け取れます。厚生年金は「老齢厚生年金」と呼ばれていて、加入期間と加入期間中の報酬額に応じて計算された年金額を受け取れます。

 

生徒:なるほど…。

 

先生:ただし、これらの年金を受け取るためには、10年以上の「資格期間」が必要です。資格期間というのは、「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」、および「合算対象期間」を合計した期間のことです。

 

生徒:では、いつから年金をもらえるのでしょうか?

 

先生:年金の受給開始年齢は、原則65歳からです。老齢基礎年金だけもらってもいいですし、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方をもらうこともできます。

みんなはいくらもらっている?…過去の統計を振り返る

生徒:では、いくら年金をもらえるのでしょうか?

 

先生:厚生労働省が公表している「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、月々の年金平均受給額は、繰り下げ受給をしていない65歳以上の場合、国民年金がおよそ5万6,000円、厚生年金がおよそ15万1,000円となっています。年齢別に見ると、図表2のように、年を追うごとに年金がだんだんと減らされていることがわかります。

 

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
[図表2]年齢別老齢年金の平均月額 出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

 

生徒:では、合計毎月20万円程度もらえるということでしょうか?

 

先生:いいえ、そうではありません。厚生年金の加入者は、国民年金に厚生年金が上乗せされた年金額を受け取っています。国民年金も合計して15万1,000円ということです。また、年度別に見ると、年を追うごとに年金がだんだんと減らされていることがわかります。

 

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
[図表3]国民年金と厚生年金の平均年金月額の推移 出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

【国民年金】もらえる年金の計算方法

生徒:年金額はどうのように計算されるのでしょうか?

 

先生:国民年金の場合。2023年現在、20歳から60歳までの40年間にわたって保険料をすべて納めると、令和5年4月からは老齢基礎年金の満額として年額79万5,000円がもらえます。月額では6万6,250円です。ここから健康保険料と所得税が取られるので手取りはもっと少なくなります。年金の全額免除や一部減免を受けている期間がある場合も、図表3の計算式を使えば、受給額を計算することができます。

 

出典:日本年金機構 ※68歳以上(昭和31年4月1日以前生まれ)は、792,600円
[図表4]老齢基礎年金の受給額の計算式 出典:日本年金機構
※68歳以上(昭和31年4月1日以前生まれ)は、792,600円

 

生徒:40年間の加入で満額もらえるということは、加入期間が20年間なら半額になるということですか?

 

先生:そうですね。20年間の加入だと、月額3万3,125円になります。

【厚生年金】もらえる年金の計算方法

生徒:厚生年金に加入していた会社員の場合はどうなるのでしょうか?

 

先生:厚生年金に加入していた人がもらえる年金額は、加入期間の年数だけでなく、加入期間中の報酬額の大きさによっても変わります。ですから、基礎年金ではなく厚生年金の部分のことを「報酬比例部分」と呼ぶのですよ。

 

生徒:では、稼いでいた報酬額に一定の割合を乗じて計算するのでしょうか?

 

先生:そうです。2003年3月以前の加入期間と2003年4月以降の加入期間では、計算式が少し異なるので、それぞれ計算してから合計します。2003年3月以前は、平均標準報酬月額に0.7125%と加入期間の月数をかけた金額、それ以降は、平均標準報酬額に0.5481%と加入期間の月数をかけた金額です。これらを合計した金額が1年間にもらえる報酬比例部分の金額になります。

 

<2003年3月以前の加入期間>

平均標準報酬月額×7.125/1,000×2003年3月までの加入期間の月数

 

<2003年4月以降の加入期間>

平均標準報酬額×5.481/1,000×2003年4月以降の加入期間の月数

 

生徒:標準報酬月額とはなんでしょうか?

 

先生:これは、1年間の給与総額を12カ月で割ったものです。下限は8万8,000円、上限は65万円となっています。

 

生徒:では、一生涯の平均年収を600万円と仮定すると、報酬比例部分はいくらもらえることになりますか?

 

先生:加入期間を2003年4月以降として、平均月収と加入期間ごとに計算すると、平均年収600万円、平均月収50万円として40年間加入すれば、報酬比例部分は年額131万円、月額で11万円程度になるでしょう。

 

生徒:そうすると、基礎年金6万4,000円との合計で17万4,000円程度でしょうか。年収600万円でも、老後生活はなかなか大変そうですね…。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

★日本の年金制度のしくみや、年金額の計算方法についてはこちらをチェック!

【老後の年金】自営業・会社員の国民年金(基礎年金)と厚生年金はいくらもらえるか?【令和5年に公認会計士が計算】

 

 

★定年退職後の60代の生き方についてはこちらをチェック!

【年金と老後】定年退職後どう生きる?60代の年金生活の現実と解決策

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