「引き続き勤務すること」は大前提
これから老後資金を築くにあたって、まずは60歳の定年後、たとえ給与が下がっても勤務を続けることが大前提です。60歳から5年間、600万円という収入を確保することができ、Bさんが今までのように散財せず生活すれば、貯蓄に回して老後資金を築くことも可能となるでしょう。さらに、65歳以降も可能な限り仕事を継続して、資産寿命を伸ばすことが大切です。
厚生労働省「労働力調査」によると、2021年時点では65歳以上の25%程度が働いています。男性だけで見ると約34%と、約3人に1人が就業者です。また同統計によると、65歳以降の就業率は増加傾向にあります。今後も65歳以降働く機会が増えていくことになるでしょう。
AさんBさん夫婦に限らず、老後資金に不安がある場合には、65歳以降も働くことを検討する必要がありそうです。
また、専業主婦だったBさんも、フルタイムでなくてもいいので働いて家計を助ける必要があるでしょう。専業主婦を続けて働かない場合よりも収入や貯蓄が増やせますし、また働くにあたって、もし厚生年金に加入することになれば、将来65歳以降の公的年金についても2階建て(老齢基礎年・老齢厚生年金)で増やすことも可能です。
公的年金の繰上げ受給は最終手段
AさんもBさんも公的年金の開始は65歳からとなっています。65歳から受け取れる年金について、60歳になれば繰上げ請求ができることにはなっています。
60歳以降、お金がないと繰上げ受給をして当面の資金を確保する方法もあるでしょう。しかし、繰上げをすると、1月繰上げをするにつき、0.4%減額されることになっており、60歳で5年(60ヵ月)繰上げて受給を開始すると、年金は65歳開始より24%(0.4%×60ヵ月)減額された額となります。
急な出費があって資金が足りなくなりそうな場合に繰上げは1つの方法ではありますが、減額された年金が生涯続くことになるため、注意が必要です。
とりあえず、60歳以降も引き続き600万円の年収は確保されるとなると、退職した後の人生も長くなることを想定した場合、年金の繰上げは最終手段であり、極力繰上げはしないほうがよいでしょう。
もし、足りない資金を補う場合は、繰上げの前にまず、Bさんが買った不要なブランドものを買取専門店で買い取ってもらうことなどを考えましょう。
何より大事なのは夫婦で家計の情報の共有
預金残高が100万円弱と聞いた時、Aさん自身困惑したところですが、原因を掘り下げていくと、Bさんはもちろんのこと、Aさん自身にも、「家計は妻が上手く管理しているだろう」と思い込んでいて、これまでなにも気にせず好きに散財させていたことも原因であると言えます。
これからは家計のことについて夫婦で情報を共有する必要があります。相手に任せっきりにするのではなく、毎月の収支や預金残高をお互い確認し合いながら老後資金を築いていくことが、なによりも大切です。
井内 義典
株式会社よこはまライフプランニング代表取締役
特定社会保険労務士/CFPⓇ認定者
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