今時の専業主婦世帯のプロファイル-夫婦のいる勤労者世帯の3割へ減少、約半数が55歳以上

今時の専業主婦世帯のプロファイル-夫婦のいる勤労者世帯の3割へ減少、約半数が55歳以上
(写真はイメージです/PIXTA)

「専業主婦」の夫は本当に高収入? 税制や社会保障制度は、すでに勤労者世帯の3割まで減少した少数派の専業主婦世帯を前提とするものが根強く存在し、現状との乖離は広がっています。本稿では従来のイメージと大きくかけ離れてしまった現在の「専業主婦」の実像を、ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が解説します。

3―妻の年齢階級分布に見た特徴~共働き世帯より専業主婦世帯で高齢化進行、55歳以上が約半数へ

次に、妻の年齢階級分布の変化を見ると、夫婦のいる勤労者世帯全体については、高年齢層が増える一方(55歳以上は2002年17.7%→2022年30.9%で+13.2%pt)、若年層は減っている(34歳以下は同24.8%→同14.2%で▲10.6%pt)(図表3)。背景には、少子高齢化や未婚化の進行、男性の就業期間の延長1などがあげられる。

 

また、専業主婦世帯については、2002年では全体と比べて高年齢層(55歳以上は21.9%で全体より+4.2%pt)や若年層(34歳以下が30.4%で同+5.6%pt)が多いことが特徴的である。

 

一方で、2002年から2022年にかけては、専業主婦世帯では高年齢層が全体を上回って増える(55歳以上は2002年21.9%→2022年45.3%で+23.4%pt、全体の増加幅より+10.2%pt)一方、若年層は全体を上回って減ることで(34歳以下は同30.4%→同11.5%で▲18.9%pt、同▲8.3%pt)、全体と比べて高齢化が進行している(55歳以上が全体より+14.4%pt)。

 

 

 

一方、共働き世帯については、全体と比べて高年齢層の増加幅(同14.3%→同25.2%で+10.9%pt、同▲2.3%pt)も、若年層の減少幅(同19.5%→同15.2%で▲4.3%pt、同+6.3%pt)もやや小さくなっている。また、全体と比べて55歳以上の割合も少ない(全体より▲5.7%pt)。

 

つまり、前述の通り、若年世帯ほど専業主婦が減ったことで、共働き世帯と比べて専業主婦世帯の方が高齢化は進行しており、足元では専業主婦世帯の約半数は55歳以上が占めるようになっている(全体では約3割)。

 

*1:総務省「労働力調査」によると、高齢男性の労働力率は上昇しており(65歳以上は2002年29.9%→2022年34.9%で+5.0%pt)、このことは夫婦のいる勤労者世帯に占める高年齢層の妻の増加につながる。

4―専業主婦世帯の就業希望状況~若い年代ほど希望多い、非求職理由の大半は「出産・育児のため」

専業主婦の就業希望のある割合は、全体では2002年は26.4%、2022年は15.4%(2002年より▲11.0%pt)を占めて低下している。

 

なお、冒頭で見た通り、夫婦勤労者世帯に占める専業主婦世帯の割合は足元では約3割だが、仮に就業希望のある専業主婦が全て就業した場合は約4分の1にまで減少する。

 

年齢階級別に見ると、若い年代ほど就業希望率は高い傾向があるが、全ての年代で低下している(図表4)。なお、2022年で最も高いのは25~34歳(27.9%)で約3割を占める。

 

 

 

年齢階級別に就業希望率の変化を見ると、もともと就業希望率の低い55歳以上では僅かな低下にとどまるが(55~64歳では2002年9.6%→2002年8.5%で▲1.1%pt、65歳以上では同4.4%→同2.8%で▲1.6%pt)、就業希望率の高い44歳以下では比較的大きく低下している(25~34歳では同35.2%→同27.9%で▲7.3%pt、35~44歳では同35.4%→同2022年24.8%で▲9.6%pt)。

 

44歳以下の低下幅が大きい背景には、仕事と家庭の両立環境の整備が進み、若い年代ほど就業希望を叶える妻が増えていることで、専業主婦という母集団の性質が変化していることがあげられる。

 

また、就業希望のある専業主婦が求職活動をしていない理由を見ると、全体では「出産・育児のため」(35.7%)や「適当な仕事がありそうにない」(33.7%)が3割を超えて多い(図表5)。

 

 

 

年齢階級別には、若いほど「出産・育児のため」が多く、25~34歳では75.0%、35~44歳では58.5%を占めて圧倒的に多い。一方、年齢とともに「適当な仕事がありそうにない」が増え、45歳以上では4割台を占めて最多となる。また、高年齢層では「健康上の理由のため」も増え、55歳以上では約1割を占める。

 

つまり、依然として、出産・育児期と重なる年代では、仕事と家庭の両立の困難さから就業をあきらめている女性が少なからず存在しており、出産・育児期にキャリアを中断したことは、その後の「適当な仕事がありそうにない」という状況にも結びついている様子がうかがえる。

 

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次ページ5―夫の年収階級別に見た特徴

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月22日に公開したレポートを転載したものです。

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