教育費は1,500万円以上…「奨学金制度」などの利用も検討
孫の教育費については、高校までは公立に進んだとしても、進学塾代なども含め進学する大学によっては卒業するまでに1,500万円、あるいはそれ以上の費用が必要になる可能性があります。
孫は現在4歳ですから、だいたい10年後には高校や大学の進路※を決めます。そのころから、貯めた教育費の支出が徐々に始まる見込みです。
※ 子どもの高校卒業後の進路は、母子世帯では「大学」が 41.4%、大学等(大学、短大または専修学校・各種学校)が66.5%を占める。また、子どもの最終進学目標について、「大学・大学院」とする親は母子世帯で 50.1%(出所:同上)。
ちなみに、現行制度では、高校通学時には文部科学省の「高校生等への修学支援※1」を、大学・専門学校等通学時には日本学生支援機構の「給付型や貸与型の奨学金制度※2」などを利用することができます。
なお、給付型奨学金を利用する際は、授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)ができる「高等教育の修学支援新制度※3」を併用できます。ただし、これらの制度を利用するときは所得制限の確認が必要です。
※1 詳細は、文部科学省「高校生等への修学支援」を参照。
※2 詳細は、日本学生支援機構HPを参照。
※3 詳細は、文部科学省「高等教育の修学支援新制度」を参照。
また、居住している市区町村の福祉協議会や市区町村福祉関係窓口に、母子世帯の公的な支援制度を相談するのもいいでしょう。今後、万が一娘の収入が減った際などに命綱になります。
ひととおり試算を終え、筆者の話を聞いたAさんは、「とにかく、収入は現在のところ増える見込みはないので、支出を減らすために話し合ってみます」とその日は帰っていきました。
まとめ…娘と孫との「新たなセカンドライフ」がスタート
後日、Aさんが再び筆者のところを訪れました。娘は夫と離婚の手続きを進め、孫の親権は娘が持つことで夫も同意したそうです。しかし、養育費※には期待していないといいます。
※ 母子世帯で、養育費を取り決めている家庭は46.7%。取り決めていない理由は、「相手と関わりたくない」が34.5%、「相手に支払う意思がないと思った」が15.3%。また、離婚した父親からの養育費の受給状況については、「現在も受給している」が28.1%。そのうち養育費の額が決まっている世帯の平均月額は5万485円となっている(厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要」より)。
そして、娘は、家計を見直すためAさんの預金通帳をみて「私が学生でひとり暮らししていたころ、こんなにお金は使ってなかったよ」と言い、3人でも月15万円で生活することにしたそうです。この支出額をキープできれば、娘の給与は貯蓄に回すことができるでしょう。
Aさんは、「このときの娘の口調が、亡き妻と同じだったんです。娘は知るはずもないのに……」と微笑みました。さらに、娘から「息子に寂しい思いをさせないために、パパも長生きしてね」と言われたそうで、Aさんは孫が成人するまで元気でいると誓ったそうです。
現在、娘は会社で商品開発に、Aさんは孫の保育園への送り迎えに励んでいます。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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