アート作品の価格が高騰するワケ
オークションの価格形成にも穴があります。それは、落札を勝ち取る者(ウィナー)と、最後に諦める者(アンダービッダー)の二人により価格が決まるということです。
たとえばビル・ゲイツとジェフ・ベゾスのような大富豪の二人が、まだ新人で、何の大した価値も付いていないアーティストの絵を気に入ってしまった場合、オークションでは二人の勝負になってしまいます。意地の張り合いで、どんどん値段が上がり、市場価格をはるかに超えて競り上がっていきます。
本来であれば100万円くらいの市場価格の作品が、大富豪二人の意地の張り合いでオークションパドル※を下ろさなくなることで、1億円以上の値段に跳ね上ったとしても、オークションではそれが落札価格として記録されることになります。
※オークションパドル:入札時の番号札。
当然その結果、市場では大富豪コレクター二人が意地の張り合いでついてしまった値段だと語り継がれることになりますが、オークション価格というのはあくまで富裕層のコレクターが二人で価格形成する形態であるという事実も残ります。
当然、ほとんどの参加者は、そのアーティストの市場価格や作品の状態など、さまざまな要因を知ったうえで参加します。そのため、通常は市場価格の範囲内で落札されることがほとんどです。しかし、あくまでオークションという価格形成の方式は、現代の資本主義を象徴するかのような競争原理の中で、価格が決まっていくということなのです。