知らず知らずのうちにGAFAM企業から受けている“誘導”
デジタルの世界がどう発展してきたかを、少し振り返っておきましょう。今、私たちがスマホやパソコンを使って利用しているインターネット環境は、「Web2.0」と言われます。
その前は「Web1.0」と呼ばれており、インターネットビジネスが始まった当時のサービスです。「Yahoo!」のような検索サイトがネットの中心で、私たちはネット関連の企業から提供されるサービスやコンテンツを使うことだけで満足していた時代でした。
これが「Web2.0」の時代になると大量のデータを扱えるようになり、ブログやSNSなどで、プログラムが書けない人でも情報を発信でき、インターネットを使ってさまざまな試みを主体的に実現できるようになりました。
しかし、「誰でもが自由にWebを活用できる」というのが問題で、それは結局、ユーザーがフォーマットを提供する企業に従属することでしか実現できなかったのです。
そのため私たちは、いくつかの限られた企業の支配下で情報をやり取りせざるを得なくなりました。この「いくつかの限られた企業」というのが、GAFAM(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon、Microsoft)と呼ばれる「Web2.0」世界の支配者たちです。
インターネットを使っている以上、誰もがどこかでこの4つの企業に関わらざるを得ないのが現状です。そのたびに私たちはGAFAM企業に個人情報を提供し、知らず知らずのうちに「こんな情報がありますよ」とか「こういう商品はいかがですか?」という誘導を受けてしまっています。
究極の資本主義であり、究極の中央集権体制
すべての商取引が、限られた企業が持っている個人の情報を入れ込んだ大量のデータベースで管理される。これは究極の資本主義であり、究極の中央集権体制です。
たとえばアメリカ大統領は国民が選挙で選び、2期まで大統領職を全うすることが可能ですが、最大8年で交代することになります。この「大統領選挙」はとても素晴らしい制度で、質はどうあれ、多数決によって「皆がいい」と思う人が選ばれるわけです。だからアメリカ人はある程度、「自分が住んでいる国をどのような国にするか」を自分で決めることができます。
しかし私たちはマーク・ザッカーバーグ※1やイーロン・マスク※2といった、インターネットを支配する企業のCEOを選ぶことはできません。彼ら自身が大株主であれば、永遠にその企業のトップとして君臨することが理論的には可能な仕組みになっています。
彼らは悪い人たちではなく、善意の素晴らしい資質の経営者でありますが、時間と共に人間は変化するというリスクがあります。
成長して良い方にだけ変わっていけばいいのですが、長期にわたって会社を支配することになると、経営者が悪い方向に変節していく例も歴史の中では数多くありました。あらゆる商取引を実質的にコントロールしている経済的な支配者がいて、その人が時間とともに変化していくリスクの中で、私たちは、その仕組みに支配されるしかなくなっているわけです。
これはある意味で非常に怖いことであり、大きなリスクになります。これこそが18世紀から始まった近代資本主義の行き着いた先であるとも言えるわけです。
近代国家体制やその下で活動する企業統治体制により、人間社会を統治・支配しながら、技術革新により成長と利潤を追求し、インフラを牛耳り、利益を享受する企業や国家が世界を支配していくのです。
※1:マーク・ザッカーバーグ/アメリカのプログラマー、実業家。1984年生まれ。Meta(旧Facebook)の共同創業者兼会長兼CEO。
※2:イーロン・マスク/南アフリカ共和国出身の起業家、エンジニア。1971年生まれ。PayPalの共同創業者。2022年にツイッターを買収して話題になった。